1839 ヴィクトリア女王 ウナ＆ライオン 5ポンド金貨 PCGS PR64DC WR-278

最高の保存状態を誇る英国貨幣史上空前の傑作「ウナとライオン」の新入荷

英国コインの長大なる歴史を紐解きますと、常にある一つのクライマックスとも呼べる出来事に注視してしまいます。それは常に1839年に発行されたコイン史上最大の傑作「ウナとライオン」の出現を指し示しています。18世紀中盤にイングランドに興った産業革命の成功を背景に、飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続行していた大英帝国の宗主ヴィクトリア女王の即位から3年目にして世に送り出された貨幣学上の奇跡とされる名貨です。コイン表面には、新しく帝国を率いることになった若干18歳ながらも威厳に満ち溢れた君主の横顔がくっきりと浮かび上がっています。そして待望の裏面ですが、当時隆盛を極めていた新古典様式に則った世にも優美な意匠がきめ細やかに刻まれています。この完全に新しいコンセプトによる斬新極まりない伝説の生みの親は、英国史に名を刻む彫刻の魔術師、ウィリアム・ワイオンに他なりません。「グロリアーナ」ことエリザベス1世時代の英国を代表する抒情詩人エドマンド・スペンサーの代表作「妖精の女王」から着想を得た「ウナとライオン」の物語は、ワイオンの霊感によってコイン上に視覚化されるに至ります。妖精ウナと彼女の無二の親友であるライオンが描く芸術性豊かな情景は、そのまま女王ヴィクトリアと全世界に広がる大英帝国の臣民に置き換えることが可能な程の強烈なプロパガンダを実感させるものです。

当初コインセットの一部分として発表されたとされるこの作品は、400枚程度が発行されたに過ぎませんでした。その内一体どれ程のオリジナルが、それも最良の保存状態によるものがこの世に存在するのかは謎の領域でしかありません。この度、新入荷しました1839年版「ウナとライオン」は、世界最高のコイン鑑定機関であるPCGSによってグレード64・ディープ・カメオの査定結果を付与されたもので、これは同作品中世界で5番目に高い格付けを誇るものです。初発行以来180年以上の長きにわたって数々の伝説を生み出した「ウナとライオン」ですが、21世紀以降の価値推移には目を見張るものがあります。過去2年間に開催された世界的規模のオークションでも毎回、目玉商品として取り扱われ、常に最高落札値で落札されています。これはいかにこの作品が全ての英国アンティークコインの中で単独で高い評価を確立しているかを示す証拠でもあります。今回は限定1枚のみの入荷ですので、お早めにお求めになられることをお勧めいたします。

傑作「ウナとライオン」5ポンド金貨の表面に刻まれるヴィクトリア女王お気に入りの「ヤングヘッド・ポートレート」

「大英帝国」の名の下に史上最大の帝国を築きつつあった1830年代の英国に君主として即位した若き日のヴィクトリア女王。若干18歳の君主は、その余りにも壮大なスケールを誇る捉えどころの無い国家を生来の威厳と自己修練によってその後63年間もの長きにわたって統治します。その長大なる治世は後に「ヴィクトリア期」と呼ばれ、歴史上における英国の近代の幕開けと見なされるようになります。女王に相応しい風格を身に付けたヴィクトリアは夫アルバート公爵の助言の下、絶えず膨張し続ける帝国の宗主として国家と命運を共にしました。即位の翌年1838年にロンドンのウェストミンスター寺院にて挙行された新女王の戴冠式を記念して発行されたコイン表面に初めて描かれた「ヤングヘッド」の愛称を持つ治世初の公式肖像は、即位当初のヴィクトリアの瑞々しい美しさを表出するコインポートレートの歴史的大作としてその後、高い評価を獲得します。ヴィクトリア自身もことのほかこの肖像を気に入っていたと伝えられており、作者のウィリアム・ワイオンの豊かな芸術性を讃える言葉が数多く残されているほどです。女王は「ワイオン氏ほどに私を私が描いて欲しいように描いてくれるアーティストは他にいません」と絶賛し、その後、60代半ばに至るまで決して公式コイン肖像を新しいものに変更する許可を与えなかったと言われています。若々しさと共にそこに表現されている見逃すことのできない要素は、史上最大の帝国の未来を背負うことになった使命感漲る新国王の真摯な気迫であり、女王の治世を代表する名コインポートレートとして歴史的評価を確立するに至ります。ジョージ王朝時代末期のコイン界にて頭角を現し、ウィリアム4世の治世を経て、ヴィクトリア朝初期にはロイヤルミントの彫刻部門主任を務めていたワイオンの天賦の才能は、同ポートレートの制作によって開花したと言っても過言ではありません。そして女王の即位3周年の年に発行された「ウナとライオン」5ポンド金貨の表面に刻まれたことにより、同ポートレートはその後180年以上にわたって「ヤングヘッド」の愛称と共に英国貨幣史上におけるコイン肖像の最高傑作としての名声を欲しがままにしています。

英国貨幣の金字塔「ウナとライオン」がコイン上に表現する芸術的本質

ヴィクトリア女王の即位の3年後に発行されたアンティークコインの金字塔「ウナとライオン」は名匠ワイオンの代名詞とされるほどに名高い作品ですが、そのアイデアの源はヴィクトリア女王の即位の約240年前のエリザベス1世の治世にさかのぼります。女王の治世は一般的に英国文学の最盛期と見なされていることがよく知られていますが、とりわけ同時代を代表する詩人エドマンド・スペンサーの叙事詩「妖精の女王」は、英国におけるルネッサンス期最大の文学的遺産の一つとして広く知られています。作中に登場するウナとライオンはそのままコインの題材となり、女王の指し示す未来に向かって歩まんとする力強い英国民を象徴している点に作者ワイオンの鋭い直観力を見いだすことができ、共感を呼びます。上部の碑文は「神よ我が歩みを導き給え」を意味するラテン語ですが、英国の君主となったヴィクトリア女王の在位が女王自身の私欲によってではなく、運命によって定められたものであるということを如実に物語っています。19世紀前半の英国芸術界を席巻していた新古典主義の潮流はこの作品のデザインにも多大なる影響を与えており、いかにワイオンがこの新しい芸術様式を消化し、コインのデザインとして転用する術に長けていたかを実証しています。英国貨幣界の新時代を切り開いたとも言えるこの名デザインはその後、コイン界の伝説として継承されることになりますが、未来永劫解き明かすことが不可能な、人類に投げかけられた永遠の謎として生み出されたように思えるほどの魅力を湛えたその外観には心惹かれるばかりです。そしてその余りにも無防備な美しさに触れる者はワイオンの魔術に翻弄されながらも、英国コインの芸術的本質を改めて知る思いを抱くことでしょう。

品番	1141
鑑定番号	29448545 現在のPCGS鑑定数はここをクリック下さい
グレード数	PR64DC
最大発行数	400
重量	39.940 g
直径	36.000 mm
品位	約91.7%Au（K22）
表面	ヴィクトリア女王
裏側	ウナ＆ライオン
発送元	日本国内から発送