ご挨拶
皆様こんにちは。コインパレスの室田でございます。
微かな春の兆しを感じずにはいられない今日この頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
この度は英国を代表する優れたブランドでありながらも、意外と知られていない三つのブランドについての文章をコラム形式にてご覧に入れます。
古き良き英国の伝統を継承するこれら三社とその商品ですが、こと我が国日本においてはまだまだ知られていないというのが現状です。
どうか最後までご高覧のほど宜しくお願いいたします。
英国人気質を余すところなく感じさせるデンビー社の「ストーンウェア」
1809年の創業以来、200年以上にわたって英国のお家芸とも言える質の高い手仕事による製法を守り続け、20世紀以降は日常を彩る耐久性に優れた実用的な食器の製造によって世界的な称賛を獲得した英国屈指の陶磁器ブランド「デンビー」( Denby )。
我が国ではまだまだ未知のブランドであるデンビー社ですが、堅牢性に優れ、如何なる料理をも引き立てながらも普段使いの器としての無限の可能性を秘める同社のテーブルウェアは、今や英国のみならず、アメリカを始めとする全世界の愛用者によって重用され、個々の食卓に華を添えています。
あくまでも「メイド・イン・イングランド」にこだわり続ける同社の究極の職人技は手作業による製造の全工程に表れており、今も同社の製品の高いクオリティーを支えています。
元々、小規模な陶磁器製造会社として工業用ボトル等の限られた製品のみを制作していたデンビー社ですが、時代の空気を先読みするその社風からか、それぞれの時代の様式感を忠実に反映するかけがえのない食器を数多く世に送り出し、英国のごく普通の食卓風景を全世界に広めることに貢献し続けて来ました。
21世紀以降の多様化するグローバルな食文化にも対応しようとする同社の真摯な姿勢は、過去20年間に発表された食器のラインアップを見る限りにおいて顕著であり、英国をはじめとする全世界の食生活の国際化に貢献していると言えます。
独自の和食文化を持つ我々日本人にとっても、いかにデンビー社の食器が日本の普段の食卓に溶け込むほどに、洋の東西を超えた純粋性を感じさせるものであるかが分かります。
こと英国においても、2000年以降にブームを巻き起こした日本食文化が英国人の食生活に多様性をもたらし、若者を中心として箸を用いて食べる和食が空前の人気を博したことは記憶に新しいのではないでしょうか。
英国人の朝食として一般的なシリアル用に考案された大きめのシリアルボウルを用いて日本製のインスタント・ヌードルを食べるといった光景も、今日においては英国におけるごく普通の生活の一シーンとしてあり得ることかも知れません。
かようにして国際化が浸透しつつある昨今の世界において、デンビー社が創造する独創性豊かな食器の一群は不可欠と言っても過言ではない程です。
また同時に、それぞれの家庭ならではの個性豊かな味をも引き立ててくれることでしょう。
今や同社の主力商品とも言えるストーンウェア(日本では炻器(せっき)と呼ばれています)は、一般的な英国家庭においては昔から欠かすことのできない調理器具ですが、特にデンビー社のそれは耐久性に優れていることで知られ、今やこの種の食器の製造にかけては右に出る者の無い程の揺るぎない信用を獲得しています。
オーブン料理の友として耐熱性に優れ、ガラス質で覆われていることから衛生面においても特筆され、また現代の食器洗浄機にも対応できる万能食器として多くの利点を有するデンビー社のストーンウェア。
またいかなる料理を盛り付けても見栄えがし、まず何よりも料理がおいしそうに見えることが同社の製品の最大のセールスポイントです。
採用されているデザインと色彩は厳選されており、華美な装飾やゴールド・真紅などの極彩色は意識的に避けられているようです。
普段使いの英国製食器としてのデンビー社の品質は常に折り紙付きですが、それらの食器に見られるシンプルな奥ゆかしさからは、古きよきものを大切にして次世代へと継承しようとする英国人気質がひしひしと伝わってきます。
一点一点の食器に英国人が求めて止まない生活のゆとりが封印されており、英国の国家としての高い成熟度を直接感じ取ることができます。
デンビー社が食器の製造によって提唱する英国流シンプルライフがいつの日か英国のみならず我が国日本においても広範囲にわたって浸透し、美しくもゆとりに支えられた日常生活を享受する日が来るのもそう遠い未来のことではないかもしれません。
紆余曲折の道を辿りながらも独自の境地を切り開いた英国史上最高の筆記具会社「コンウェイ・スチュワート」
1905年の創業以降、英国における万年筆の代名詞とされるほどに著名な企業であり、ハンドメイドにこだわる最高級品質の筆記具の開発によって世界的な称賛を獲得した「コンウェイ・スチュワート」( Conway Stewart )。
ペン製作の熟練した職人であった創業者フランク・ジャーヴィスとトマス・ガーナ―によってロンドンに設立された同社の「コンウェイ・スチュワート」という社名は、創業当時にロンドンの街で人気の高かったミュージック・ホールの名に基づいて命名されたと伝えられています。
元々他社の万年筆のみを取り扱っていたコンウェイ・スチュワート社でしたが、オリジナルの商品を開発・販売し、次第に経営は軌道に乗るようになります。
創業に先駆けて、当時英国で最大の販売実績を誇っていた筆記具メーカー「デラルー・カンパニー」にて勤務していた二人は、無名ブランド商品の販売によって業績を伸ばすことが、当時の筆記具業界においていかに困難なことであるかを熟知していました。
そのような時代背景の下に、彼らが所属していたデラルー・カンパニーは万年筆の高級ライン「オノト」の販売促進のために相応のキャンペーンを展開しました。
ここから着想を得たジャーヴィスとガーナーは、高い商品価値と信頼性を掲げる高品質筆記具を良心的な価格にて販売するための独自の販路を見い出します。
大きな社会的変貌を遂げた第一次世界大戦後の英国において、コンウェイ・スチュワート社は満を持して一連の筆記具コレクションの第一弾を発表します。
それらの商品は異なる機能性、素材、サイズなどを特徴とするものでしたが、時代のニーズに見合った実用性が受け入れられ好評を博しました。
そしてそのビジネスモデルそのものも軌道に乗り、当時、既に成功を博していた他の同業者たちの出資の下に市場を拡大させることに成功します。
1927年に始まった新規事業の一環として、コンウェイ・スチュワート社は創業地を離れ、その後、約20年間にわたって同社の経営の中心地となる、より利便性に優れたロンドン市内へと移動することになります。
この転居が功を奏してか、1930年の大恐慌時代の最中であっても同社の経営は保証され、色彩豊かな新しい素材として当時注目を集め始めていた硬質プラスチックを用いての生産が頂点に達し、経営の黄金時代を迎えます。
その後、再び安住の地を求めて転居するに至った同社ですが、そこで初めて社の最盛期が極めて短いものであることを悟ることになります。
この転居と同時期にボールペンの開発が進んでいましたが、この新事業は先行きが不透明な上に、万年筆よりも比較的製造コストがかさむことが最大の難点でした。
時が経過して商品価格を抑えることに成功したものの、逆に万年筆の売り上げをひっ迫するようになります。
1960年代に入り、万年筆の売り上げは急速に激減し、売り上げの低下はもはや無視出来ないほどに顕著となりました。
1990年には再び英国を代表する高級筆記具メーカーとしての権威を回復するに至ったコンウェイ・スチュワート社でしたが、世紀を超えて2014年に同社は再び業績不振に陥ったため破産管財人の管理下に置かれ、一世紀以上続いた事業は遂に終焉を迎えることになります。
どのような状況下においても、常にハンドメイドによる製造にこだわりを見せ、「メイド・イン・イングランド」の万年筆の素晴らしさを堂々と世に知らしめてきた英国最高の筆記具メーカーとしての並々ならぬプライドを、同社の主力商品である精巧な万年筆に見出すことができます。
中世以降、英国がお家芸として来た手工芸ならではの熟練の技を世界に伝えることを何よりも使命としていた同社の優れた万年筆は、時代を超えて語り継がれるべき英国における過去の国家的伝統産業の興隆を端的に物語っています。
そして同社がこの世に残した万年筆の名品の数々は今日、希少価値の高いヴィンテージ品と見なされており、マニア垂涎の的として珍重されています。
エリザベス2世を始めとする英国王室のメンバーの用命を受けて一世を風靡した英国製筆記具の最高峰「コンウェイ・スチュワート」。
同社の歩んだ約一世紀に渡る道程は、かつての大英帝国が第二次世界大戦を経て新生イギリス連合王国として生まれ変わり、未曾有の発展を遂げた時節とほぼ同時期に当たります。
同社が創造した格調高く、かつ実用性に優れた万年筆の傑作の数々が、家族経営やハンドメイドを始めとする過去の英国の伝統的な企業経営手法の最大の遺産として、また大英帝国時代最後期を記念する古き良き思い出の品として、近い将来、我々の生きるこの21世紀の世において再び賞賛と憧憬の対象となる日が来ることを願わずにはいられません。
英国が世界に誇るヴィクトリア朝創業のチョコレートの老舗「シャボネル・エ・ウォーカー」
時はヴィクトリア朝、大英帝国時代の最盛期であった1875年のことでした。
ロンドンの片隅にひっそりと店を構えた無名のチョコレート店「シャボネル・エ・ウォーカー」( Charbonnel et Walker ) が、後に英国を代表する偉大なるショコラティエへと発展を遂げ、世界的な称賛を獲得することになろうとは開店当初、誰も思わなかったことでしょう。
時を経て21世紀の現在、ロンドン市内に点在するほとんどのスーパーマーケットのチョコレート売り場には同社の伝説的なチョコレートが所狭しと並んでいます。
今日、これ程までに気軽に購入することができるようになったシャボネル・エ・ウォーカー社の商品ですが、企業としては昨年9月に崩御されたエリザベス2世お気に入りのショコラティエとしての華麗な来歴もあり、女王以外にも他の王室メンバーの愛顧を得て英国王室御用達の栄誉に浴して来た栄光の過去が現在の同社の名声を決定づけていることは明らかです。
西アフリカや南アメリカ原産の上質なカカオのみを使用して一点一点丁寧に作り上げられる上質なチョコレートは正に絶品であり、同社が今日まで受け継いできた秘伝のレシピは、創業者のシャボネル夫人とウォーカー夫人の名コンビが試行錯誤を経て生み出した同社のオリジナルに他なりません。
パリのチョコレート店「メゾン・ボワシエール」にて修行を積んだフランス人ショコラティエ、シャボネル夫人と、英国人チョコレート職人ウォーカー夫人をロンドンで引き合わせたのは、後の英国王エドワード7世として知られるアルバート・エドワード王太子であったと伝えられています。
語学に堪能であり、何よりもフランス文化に造詣の深かった王太子は、チョコレートのみに捧げられるこの小規模でありながらも高品質をモットーとするメゾンをいたく気に入り、チョコレート業界初の英国王室御用達の認可を与えて手厚く保護しました。
それ以降、世界中の錚々たるセレブリティーに愛され、瞬く間に地球規模での販売を展開したシャボネル・エ・ウォーカー社ですが、同社を贔屓とした顧客のリストには常にエリザベス2世の名前が挙がっていたことから、その商品は英国を象徴するとまで言われ、半ば伝説化しています。
シャボネル・エ・ウォーカー社のチョコレートは全体的にその品質の高さに定評がありますが、惜しげもなく上質なカカオをふんだんに投入して製造される最高級ダークチョコレートを用いてコーティングされたクベルチュールを特徴とする「薔薇とスミレのクリーム入りダークチョコレート」は、生前女王が最も愛したチョコレートの傑作として同社の名を高めることに貢献しました。
馥郁たる花の芳香とそれを敢えて抑えるようなほろ苦いダークチョコレートの対極的な味わいが絶妙なハーモニーを奏でます。
また紅茶と一緒に嗜みますと一層エレガントな香りが広がることでしょう。
シャボネル・エ・ウォーカー社のチョコレートを好んだセレブリティーの一人として知られていた生前のダイアナ元妃ですが、イースター用の装飾された卵型のチョコレート「イースターエッグ」を幼い王子たちへのプレゼントとして購入し、ケンジントン宮殿への配送を依頼したという記録が残っているとのことです。
数えきれないほど多くの人気商品を生み出したシャボネル・エ・ウォーカー社ですが、前述のエリザベス女王御用達のチョコレートと並んで今でも同社のフラッグシップとされているのが「ピンク・マルク・ド・シャンパーニュ・トリュフ・チョコレート」です。
ストロベリーの甘酸っぱい香りが漂うホワイトチョコレートでコーティングされたこの絶品チョコレートの中には、マルク・ド・シャンパーニュと滑らかなミルクチョコレートが同居しています。
大変味わい深い逸品であり、高貴でありながらも微かな愛らしさを失わない独特の風味が多くのファンの心を惹きつけて止みません。
同社の商品の最大の特徴として、そのクオリティーの高いパッケージを挙げる往年のファンも多いことでしょう。
シンプルでありながらも気品漂う同社の外箱やリボンは、時代を超越して存続する英国らしい上質さの好例であると同時に、程よく整った現代性をも感じさせる繊細優美なものです。
通常の丸型の外箱の他に、ハート形の物や英国旗ユニオンジャックを彩る豪華なものまで多種多様なパッケージが取り揃えられています。
ロンドン屈指の高級住宅街メイフェアの最南端に位置するオールド・ボンド・ストリートを本拠とするシャボネル・エ・ウォーカー社の本店ですが、その歴史的名声に相応しい重厚感のある本店の店構えが歴史上における同社の確固たる存在感を表現しているかのようです。
古き良き大英帝国時代の残影とエドワード朝時代の美意識が横溢するその純英国調の空間は、世界各国から世界最高水準のチョコレートを求めてはるばるとここを訪れる顧客の五感を満足させることでしょう。
今やウェイトローズ等の市内のスーパーマーケットや2000年代以降に開業したホール・フーズ・マーケットなどの自然派食料品店などでも気軽に同社のチョコレートを購入できるようになりましたが、やはり格調高く趣のある本店にて色々と品定めをしながら時の経つのを忘れてじっくりと買い物を楽しみたいところです。
時の君主ヴィクトリア女王の来訪によって「ロイヤル」の称号を賜ったと言い伝えられているこの雅やかな「ロイヤル・アーケード」の入り口に今も静かに佇むシャボネル・エ・ウォーカー社本店ですが、アーケード内部の装飾、特にガラス張りの天井は必見であり、ヴィクトリア朝時代の建造物ならではの様式美を堪能することが可能です。
今も昔も変わらぬ販売スタイルを踏襲するこの愛すべき場所は、ロンドンにおけるチョコレートのメッカとして今後も世界中のファンを魅了し続け、英国を代表する老舗ショコラティエの名に相応しい独自の境地を開拓して行くことでしょう。
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