2024 チャールズ3世 ピストルッチ作聖ジョージ竜退治 5000ポンド5キロプルーフ金貨 未鑑定 箱付き【ご予約承り品】

2024年年頭の英国貨幣界を賑わせた「偉大なる彫刻家コレクション」第5弾の詳細発表

英国貨幣史を彩る過去の王朝時代の傑作コインを現代に紹介し、豊富なラインアップによって世界的な注目を集めるモダンコインシリーズ「グレート・エングレーバーズ・コレクション＝偉大なる彫刻家コレクション」。貨幣製造の長大なる歴史を有し、今なお英国のみならず、世界を代表する造幣局として貨幣界に君臨するロイヤルミントならではの確かな技術とデザイン面での革新性が遺憾なく発揮された同コレクションは、過去4回にわたって歴史的な大作を忠実に復刻し、世界中のコインファンを熱狂させました。とりわけ第1弾「ウナとライオン」は大きな成功を収めましたが、これらは全て、過去の名作を現代に復刻することの歴史的意義を明確化したばかりか、いかに現代の貨幣界が古典作品に対する飽くなき興味を抱いているかを知る絶好の機会を提供し、話題を呼びました。英国貨幣界を代表する19世紀の名彫刻家、ウィリアム・ワイオン（1795-1851）の代表作として知られる1839年発行のオリジナル「ウナとライオン」は、時の君主ヴィクトリアをウナ王女に、また大英帝国の臣民をライオンに見立てるという物語的背景を何よりの特徴とする第一級の芸術品として知られていますが、物語的背景の効果を軽減するほどに顕著であった作者の絶妙な造形感覚は、このオリジナル・コイン上にて遺憾なく発揮されており、その優れた出来栄えによって英国貨幣の最高傑作として不朽の生命を吹き込まれました。この奇跡的な完成度の高さは、ひとえに作者であるワイオンの美意識の賜物であることは言うまでもありませんが、その独創性によって、物語の一場面を金属のコイン上に意匠化するという極めて限定的な表現手段ゆえの可能性を引き出すことに成功しました。エリザベス2世（1926-2022）の治世の始まりと共に幕を開けたモダンコインの歴史ですが、2019年に初登場となった「偉大なる彫刻家シリーズ」は、70年間に及んだ女王の治世を代表する傑作コインシリーズとして、その審美性と歴史的意義の重要性ゆえに後世に語り継がれるべき価値を有するものです。その後も、第2弾「スリーグレーセス」、第3弾「ゴチッククラウン」、そして第4弾「ペティションクラウン」と英国貨幣史上に輝く錚々たる名貨が続々と登場しましたが、この度、1817年に発表された「聖ジョージの竜退治」の意匠が同シリーズの第5弾として復刻されることになり、2024年年頭の一大ニュースとして英国貨幣界を賑わせたばかりです。

英国君主の仮の姿を投映する「聖ジョージの竜退治」の傑出したデザイン

2022年9月8日のエリザベス2世の崩御に際して英国王位を継承した新国王チャールズ3世。「偉大なる彫刻家コレクション」の第4弾「ペティションクラウン」は、新国王を迎えたばかりの英国貨幣界が、モダンコイン屈指の人気コインシリーズの最新作として世に贈り、絶賛されました。それに続いてこの度解禁されることとなった第5弾は、ワイオンと並んで19世紀初頭の英国貨幣界を牽引した偉大なる彫刻家、ベネデット・ピストゥルッチ（1783-1855）の最高傑作「聖ジョージの竜退治」に捧げられます。ナポレオン戦争後の混乱の中、底知れぬ才能を秘めたこのイタリア人芸術家は、当時のロイヤルミント主任の招きに応じてイングランドに移り住み、そこを終生の地としました。ピストゥルッチの卓越した技量は当時のロンドンの上流階級の顧客層の愛顧を得て広まり、世に出たばかりのワイオンの職人技と双璧を成すほどに高く評価されていました。しかし二者の作風そのものは比較できない程に異なるものであり、また個性的でもありました。偉大なるコイン彫刻家一族の末裔として世に出たワイオンは生まれながらの職人肌の彫刻家であり、その仕事は非常に着実で安定していたと言われています。一方、ピストゥルッチはと言いますと、どちらかと言うと天才型の芸術家で、閃きに満ちた底光りするような強烈な作風を特徴としていました。ピストゥルッチが「聖ジョージの竜退治」の意匠を創造した頃の英国社会は、未だナポレオン戦争後の経済的荒廃から完全に脱却できていなかったものの、ロイヤルミントを中心とする英国貨幣界は金本位制を主軸とする新たな貨幣改革を推進する兆しを見せ始めていました。そのような社会背景の下に、一連の新たな貨幣の発行が急がれましたが、それらの新貨幣のデザインの一つとして採用されたのがこのピストゥルッチの「聖ジョージの竜退治」でした。古代ローマ時代の伝説の聖人ゲオルギウスの竜退治の場面を描くこの意匠は、古今東西の傑作コインの主題の中でも驚異的な人気を誇るものであり、同コレクションの第5弾として相応しいものであると言えます。また、ウィリアム・ワイオンとトマス・サイモンに続いて、ベネデット・ピストゥルッチの作品が選定されたことによって、歴史的コインコレクションとしての意義を強調しています。槍で悪の象徴であるドラゴンを退治する馬上の聖人の颯爽たる姿を、英国君主の仮の姿と見なすことも可能です。当復刻版の表面には、2023年5月6日に戴冠式を挙行したチャールズ3世の様式感溢れる「公式第1コイン肖像」が描かれています。コイン表裏に英国君主の威厳を掲げる当コインは、今日まで途切れることなく脈々と受け継がれてきた英国王室の未来永劫の安泰を象徴する新時代の傑作であると言えます。