2021 エリザベス2世 プレミアムブリタニア 500ポンド1キロプルーフ銀貨 未鑑定 箱付き 【ご予約承り品】

英国コインの普遍的な主題としてシリーズ化される21世紀のブリタニア

太古の昔より英国を守護すると伝えられているブリタニア像は、今から約2000年前、グレートブリテン島が古代ローマの属州であった時代に産声を上げたことが記録に残っています。想像力豊かなローマ人たちは後に女神と同じブリタニアという名を島に与え、島は北海沿岸の交易の要所として繁栄を極めます。しかし、紀元6世紀頃からローマ帝国の衰退が顕著となり、ローマ人たちに代わってアングロサクソン人たちの入植が始まります。この新しい民族が島を支配している期間に女戦士ブリタニアは徐々に姿を消しますが、完全な復活を遂げるまでには相当の年月を要しました。まず中世期に再び英国の文献にて古代の女戦士として少しずつ取り挙げられるようになるブリタニアですが、16世紀のエリザベス1世の治世下においては文献上に登場するのみならず、新興海洋覇権国家イングランドの象徴として思いがけなく脚光を浴びることになります。しかし英国コインの普遍的なテーマとしてブリタニアが選定されるまでの道程は遠く、17世紀後半のチャールズ2世の治世を待たなければなりませんでした。このコインの発行を機に、歴代英国君主のためのコインの裏面に頻繁に姿を現すことになるブリタニアですが、その数世紀後に主要なコインシリーズを形成し、継続的な人気を集めるに至るとは当時、思いもよらなかったことでしょう。1987年に新しいコインシリーズとして誕生したゴールド版ブリタニアですが、1997年にはシルバー版、さらに2018年にはプラチナ版をリリースするなど、現代ロイヤルミントがその実力を遺憾なく発揮する斬新なデザインによって世界的なブームとなり、バリエーション豊富なモダンコインならではの企画として一世を風靡しました。

重量級1キロの白銀に刻まれる女戦士ブリタニアの理想像

今回ご紹介させていただく2021年度版プレミアムブリタニア・500ポンド1キロプルーフ銀貨は、過去に発表されたブリタニアコインと比較しても遜色のない出来栄えを誇り、個性の点においてはそれらを凌駕していると言っても差し支えないほどの作品です。コイン表面にはロイヤルミントを代表するコインデザイナー、ジョディ―・クラークの代表作である「エリザベス2世の第5肖像」が描かれており、自身の治世下において印象的な復活を果たしたブリタニアに対する女王自身の祝意を感じずにはいられません。齢を重ねてなお気品を失わない女王の頭上に輝くのは、1821年のジョージ4世の戴冠式に際してロンドンの宝石商が制作したとされる門外不出の秘宝「ジョージ4世のステート・ダイアモンド・ダイアデム」です。ジョージ4世の崩御に伴い、次代の国王ウィリアム4世の王妃アデレードが相続して以降、ヴィクトリア女王、エドワード7世の妃アレクサンドラ・オブ・デンマーク、そしてジョージ5世の妃メアリー・オブ・テック等、女性の王族によって受け継がれて来たこの世紀の秘宝は、現在の英国君主エリザベス2世が即位以降70年間にわたって所有し、ロイヤルコレクション中屈指の名品としての高評価を独占しているものです。そして待望の裏面中央には表面のエリザベス女王と同じくブリタニアの右向きの胸像が神々しく描かれています。古代コリント式の兜や甲冑が本来のブリタニアの戦闘意識を如実に表現していますが、その横顔はどこか物悲しく、遠き地平線の彼方を眺めて物思いにふけっているかのようです。波打つ波濤を背景として佇むブリタニアの陰影感のある世にも美しいポートレートが、コイン裏面全体のデザインに精彩を与えていることは確かです。海をテーマとする英国の象徴ブリタニアですが、これ程までにシンプルかつ鮮烈なデザインはかつて見受けられませんでした。今後チャールズ王太子、ウィリアム王子、ジョージ王子と男性の国王の王位継承が約束されている英国王室ですが、女性の君主であるエリザベス2世の治世下に発行された当コイン上にこのように美しいブリタニアのポートレートが描かれ、女王の治世を象徴していること自体が単なる偶然であるとは思えません。改めて、この優れたデザインを重量級1キロの白銀に刻むことを企画したロイヤルミントの慧眼に最大級の賛辞を送りたいと思います。