セントヘレナ 2024 妖精の女王 ウナとライオン 1ポンド 1オンス 地金型銀貨 【1枚】 (パッケージ付き)

16世紀文学の傑作「妖精の女王」をコインデザインとして進化させたウィリアム・ワイオンの功績

16世紀、エリザベス朝時代を代表する詩人、エドマンド・スペンサーによる叙事詩「妖精の女王」。時の君主エリザベス1世も登場するこの香り高き作品は、中世英国文学を代表する傑作として、今日なおも高く評価されています。アレゴリーをふんだんに用いた長詩からなる本文は、エリザべス1世自身に捧げられたと伝えられています。全6巻と断篇からなる長編叙事詩であり、テューダー王家の始祖とされるアーサー王の伝説を物語の題材としている点が最大の特徴です。本来は全12巻から構成され、各巻において12の徳性を描写する予定でしたが、最終的には神聖、節制、貞節、友情、正義、礼節の6つのみが取り挙げられ完結しました。作中において「グロリアーナ＝偉大なる女性」と呼ばれるのはエリザベス1世自身であり、主要な登場人物として存在感を発揮しています。「妖精の女王」が当時としても高く評価された理由として、作品が暗示するテューダー家に対する賞賛の意が挙げられます。叙事詩「妖精の女王」の一部分ではあるものの、重要なストーリーラインの一環として単独で特筆されることも多い「ウナとライオン」の物語。邪悪なドラゴンによって捕らわれの身となっている両親を救済するために旅に出る乙女ウナが、旅の道中でライオンと出会い、終生の友となって旅の道連れとするというのが物語の中心です。16世紀英国文学の最高傑作とされるこの叙事詩が、英国貨幣のデザインとして採用され大成功を収めるのは19世紀前半のことでした。1837年のヴィクトリア女王の即位から3年後の1839年に、当時を代表する名コインデザイナーのウィリアム・ワイオン（1795―1851）が、このエリザベス朝時代のストーリーのコインとしてのデザイン化を考案したことが伝説の始まりでした。「ウナとライオン」の愛称によって親しまれ、英国貨幣界を代表する名デザインとされるこの作品には、時の女王ヴィクトリアがウナとして描かれ、女王に付き従う大英帝国の臣民をライオンが象徴するという寓意が盛り込まれています。それまでの時代にはなかった斬新なデザイン性によって英国貨幣界の活性化に貢献したこの作品ですが、発行枚数約400枚のみという驚異的な稀少性によって、その後の英国貨幣界の真の伝説としての絶対的地位を築き上げました。

チャールズ3世によって開かれた新時代を象徴する「ウナとライオン」の最新作

1839年の初発行以以降、英国貨幣の最高傑作として高く評価される「ウナとライオン」。その輝かしい意匠は、現代のレジェンドでもあります。今回ご紹介させていただく作品は、コレクター向けの魅力的な記念コインの発行によって国際的な注目を集めるセントヘレナが2024年にリリースした1ポンド1オンス地金型銀貨です。コイン表面には、堂々たる風格を見せるライオンに手を差し伸べる乙女ウナの姿が描かれていますが、数ある他のウナとライオンのデザインとは異なるセントヘレナ版ならではの個性的な構図となっています。ウナとライオンの上部には、原作「妖精の女王」のタイトルが刻まれています。コイン裏面には2022年以降、イギリス連合王国の新国王として同国に君臨するチャールズ3世のポートレートが掲げられています。エリザベス2世の崩御によって、イギリス・モダンコインの世界はチャールズ3世の治世へと受け継がれました。そして英国貨幣界の伝説であるこのウナとライオンのデザインも新時代に継承されることになりました。チャールズ3世による新しい治世を象徴する古典的かつ斬新なウナとライオンの登場です。