本 書籍 『The Gold Sovereign Series』

21世紀の英国貨幣界が待ち望んでいたソブリン金貨関連書籍の最高峰

コイン研究家マイケル・マーシュによる「ザ・ゴールド・ソブリン・シリーズ」は、元々二冊一組で出版された英国のソブリン金貨に関する専門書です。この度、その第2版として発表された当書籍はその改訂版として一冊物として書き改められたものであり、コイン専門家は元より、より多くの一般読者のニーズを満たすことを約束するものです。歴史的に英国法定金貨の最上位に位置するソブリン金貨を単独で取り挙げる書籍は、今日の貨幣界を見渡す限りにおいて当書以外には見当たらないことでしょう。この金貨の歴史を紐解く時、15世紀にさかのぼるソブリン金貨と、それとは完全に別種の19世紀初頭のものが同じく「ソブリン」の名の下に発行されていたという事実は意外と知られていないものです。当書はそれを理解する上でも非常に優れた書籍であり、実際に冒頭の第1版への序文に続いてまず同金貨のオリジナル（1485年に初リリース）についての文章が挿入されており、続いてモダン・ソブリン金貨（1817年に初リリース）についての文章が寄せられており、混乱の回避が意図されている点は実に嬉しい限りです。これら二種のソブリン金貨の優れた対比によって開始される当書ですが、古いソブリン金貨に関する情報は本文には含まれず、当書が基本的には新しいソブリン金貨について著された書籍であることが分かります。1816年に英国貨幣界が導入した金本位制の流れに沿って翌1817年に初発行となったこの新しいソブリン金貨は、チャールズ2世の治世以降約150年間にわたって英国金貨の主流を占めていたギニー金貨に代わってジョージ3世の治世後期に誕生しました。当書はこれに倣って、ジョージ3世の時代以降のソブリン金貨を時系列にて紹介しており、それぞれの項目も非常に分かり易く書かれています。学術書としての真価を発揮する当書は、同時に入門者にとっての英国金貨に関する必読の書でもあります。各項目には豊富な写真が挿入されており、英語を解さない読者が手に取っても十分に楽しめること請け合いです。この点こそが、当書を第一級の図鑑たらしめている最大の理由として挙げられることと思われます。一冊物の書籍として、これ程までにあらゆる角度から英国のソブリン金貨を分析した書籍は非常に稀であると言えます。当書の巻末には著者のマーシュ氏が生涯にわたって収集したソブリン金貨関連のアンティークの数々が、豊富な写真と共に紹介されていて圧巻です。それらには携帯用のコインケースや、その他さまざまなアンティーク品が含まれますが、新生ソブリン金貨が過去200年以上にわたって歩んできた道程の重みを伝えるに十分な魅力と説得力を感じさせます。当第二版の監修を務めた英国ソブリン・レアリティー社のスティーブ・ヒル氏の構成力が十全に反映された当書は、21世紀の英国貨幣界が待ち望んでいたソブリン金貨関連書籍の最高峰に違いありません。

著者 ‏ :  Michael A.Marsh

言語 ‏ : ‎ 英語

272ページ・フルカラー