2024 チャールズ3世 聖ジョージ竜退治 1/2ソブリンプルーフ金貨 未鑑定 箱付き【ご予約承り品】

同じ「ソブリン」の名によって英国貨幣史上に存在する二種の全く異なる金貨

時は19世紀初頭、ナポレオン戦争によって荒廃した国内の経済を立て直す目的で、1816年には金本位制を採用するに至った英国貨幣界でしたが、この貨幣改革の結果、法定貨として翌年に誕生した金貨こそが、今日「ソブリン」の名称によって広く認知されている近・現代英国貨幣史を代表するコインです。19世紀の英国が生み出したこの比較的新しい金貨の名称は、15世紀の英国王ヘンリー7世がテューダー朝を創設した数年後に、自身の権威とテューダー家の安泰を祈念して発行した「イングリッシュ・ソブリン金貨」に因んで命名されましたが、これら新旧二種のコインは歴史上全くの別物となります。この古いほうのソブリン金貨は、それまで英国で流通していたエンジェル金貨等の他の法定金貨に代わって1489年に誕生したものであり、今日、歴史的な意味でのソブリン金貨と言えばこのコインを指すことがほとんどです。元々君主を意味するソブリンの語ですが、その名が示す通り、当時のコイン表面には正面向き有冠の君主の堂々たる座像が描かれていました。この金貨はまた、1ポンド金貨と等価とされた英国貨幣史上初のコインでもあります。裏面には英国王室を象徴する王室紋章と、テューダー王家の繁栄を祈念するダブルテューダーローズが刻まれています。この古いソブリン金貨は、1603年に即位したジェームズ1世がその翌年に発行を命じたユナイト金貨に置き換えられるまで、実に115年間にわたって英国貨幣の首位を占めていました。ジェームズ1世時代のユナイト金貨やチャールズ2世の時代以降、長らく英国貨幣界を代表する金貨として重用されたギニー金貨に代わって19世紀初頭に誕生したのが、この新しいソブリン金貨でした。特にヴィクトリア女王の時代に発行されたソブリン金貨は、バリエーションの豊富さや女王の肖像そのものの高い芸術性によって、常にコインファンの興味を惹きつけています。ヴィクトリア朝後期には、当代随一の人気を誇った推理作家サー・アーサー・コナンドイルによる短編「ボヘミアの醜聞」の作中にてソブリン金貨が小道具として用いられる効果的なシーンが設けられていたことが忘れられません。主要なストーリーラインから察する限り、恐らくは名探偵ホームズが恋心を抱いた唯一の存在であることが暗示されるアイリーン・アドラー嬢が、自身の即興での結婚式に立ち会ってくれたホームズに対し、その謝礼として1ソブリン金貨を手渡す象徴的な場面が感動を呼びました。

新国王チャールズ3世の治世の始まりを告げるソブリン金貨の登場

これまで歴代国王の即位の記念品として発行されていたソブリン金貨ですが、今回ご紹介させていただくソブリン金貨もまた、昨年の代替わりに際して英国王位を継承した新国王の新たな治世の始まりを記念してリリースされることになりました。コイン表面には、国王自身のお気に入りとも伝えられている左向きの格調高い肖像が掲げられていますが、この作品はロイヤルミントを代表するデザイナーであるマーティン・ジェニングスの正確な写実力を証明する現代を代表するポートレートの大作に他なりません。前国王エリザベス2世の70年間に及んだ治世下には全5種の公式コイン肖像が個別のデザイナーによって製作され、それらは今や英国貨幣界の伝説として受け止められています。それらに対して、このチャールズ3世の新しいコインポートレートは、新時代の幕開けを象徴する現代の伝説として世に送られることになりました。当ソブリン貨の裏面には、世紀を超えて愛され続ける永遠の主題である「聖ジョージの竜退治」の意匠が刻まれてあり、当金貨の最大のハイライトとなっています。ジョージ王朝末期からヴィクトリア朝にかけての英国貨幣界を席巻した偉大なる才人ベネデット・ピストゥルッチの生涯最大の傑作となったこの有名なデザインは、英国君主の権威を象徴する不朽の名作として、歴代ソブリン金貨の裏面を飾ってきました。19世紀初頭のナポレオン戦争後の英国経済の復興をシンボライズするその主題は、1816年に新たに制定された貨幣法の流れに沿って採用された金本位制を象徴するものでもあります。英国貨幣界を代表する新旧の傑作を表裏に刻む当コインは、英国の永遠の君主制に捧げられるべき偉大なるメモラビリアに違いありません。