本 書籍 『Coins of England 2023』 イギリスモダンコインを完全網羅！

1970年代以降の英国モダンコインの傑作を網羅するコインマニアにとってのバイブル

共和政イングランドを打倒し、王政を復活させた偉大なる帝王チャールズ2世の治世の幕開けから6年目に当たる1666年を創業年とする英国の老舗スピンク社は、過去350年以上もの長大なる年月を各種アンティークの売買に捧げてきた英国古美術界の守護神のような存在です。あらゆるジャンルのアンティークを取り扱うスピンク社ですが、とりわけ同社のコイン・メダル部門は、これまでに英国貨幣の精髄を世に知らしめる重要な役割を果たしてきたことで知られており、上流階級人士の愛顧を得て、同社を英国を代表する古美術商へと昇格させました。英国王室のお膝元であるロンドンに居を構え、国際的にも注目度の高いオークションの開催によって活況を呈している現在のスピンク社ですが、近年、コイン関連の各種書籍の出版にも力を入れていますが、それらを通じて同社の英国コインに対する飽くなき情熱と好奇心の片鱗を窺うことができます。英国貨幣のバイブルとして、コインマニアを始め、世のあらゆるコイン関係者必須の書として重用されている「Coins of England・Decimal Issues」は、この度の2023年度版で第9版を迎えました。版を重ねるごとに充実した内容を披露してきた当書ですが、2023年度版においては、コンパクトでありながらも豊富な情報量を特徴とする当書の長所をより明確に見出すことが可能です。1952年のエリザベス2世の即位は、英国貨幣史にも大きな影響を及ぼしました。特に1971年に英国貨幣界が導入した十進法はモダンコインの新たな方向性を示唆し、今日我々がそれらのコインを深く理解する上でのある種のスタンダードを構築したことは確かです。本書は、この十進法の導入以降に発行されたモダンコインのみを取り扱っており、それに特化する英語で著された書籍としては最も含蓄の深いかけがえのない一冊です。読者の利便性に配慮した目次は非常に分かり易く、あらゆるモダンコインを各テーマごとに正確に分類しています。また、シリーズ化されたモダンコインの傑作群の紹介にも尽力しており、目次にそれらのコインの略号が列挙されていることから、本文の理解には非常に役立ちます。2022年9月8日のエリザベス2世の崩御は、英国貨幣界にも多大なる影響を及ぼしました。当第9版の最終校訂が繰り返されている間に女王の訃報が世界を駆け抜けましたが、それは今から思えば新国王チャールズ3世即位の瞬間であると同時に、モダンコインにとっての変革の時でもありました。この最新版には若干ではあるものの、新国王の「第一公式コイン肖像」を掲げる各種新作コインも掲載されており、英国モダンコインにとっての新時代の到来を強く印象付けています。かつて無い程に多彩なラインアップに支えられるようになったモダンコイン界ですが、当書はそれらのコインの詳細を理解するための座右の書として、コインマニアを始めとするコイン関係者の必要性に益するものであるに違いありません。