2023 チャールズ3世 神話と伝説シリーズ第1弾 アーサー王 5ポンド2オンスプルーフ銀貨 未鑑定　箱付き【ご予約承り品】

12世紀の歴史書「ブリタニア列王伝」が描く永遠の名君アーサー王の物語

5世紀後半から6世紀初頭にかけて存在したローマン・ケルト系ブリトン人の君主とされるアーサー王は、敵対するサクソン人の軍隊を撃退した英雄として永遠に記憶されています。しかし、アーサー王を巡る華々しい伝説の数々は、そのほとんどが民間伝承や後世の創作によるものであり、王の実在性についての議論は21世紀の今日なおも続いています。歴史上のアーサー王の存在を証明する資料として「カンブリア年代記」「ブリトン人の歴史」「ブリタニアの略奪と制服」等の著作が挙げられますが、これらに記されている内容は非常に断片的であり、その真偽のほどは確かではありません。今日、英国をはじめ、世界中で支持されている王の人気は、ひとえに12世紀の著述家ジェフリー・オブ・モンマスの歴史書「ブリタニア列王史」が描写する王の英雄性によるところのものであり、同書中の王のイメージが今なお世界中の人々の脳裏に焼き付いていると言えます。アーサー王に関する歴史的な記述が著されたのは実はそれよりもずっと前のことで、ジェフリーの著作以前にもウェールズやブルターニュの古い伝承にもアーサー王にまつわるエピソードが数多くみられます。それらの作中におけるアーサー王は超自然的な存在として、人類からグレートブリテン島を守る屈強な英雄として描写されていることが殆どでした。また時にはウェールズ人にとっての霊界「アンヌン」と繋がるスピリチュアルな人物として描かれることもありました。1138年に出版された「列王伝」において、ジェフリーが自身の文章を描く上でどれほどこれらのストーリーを引用したかについては今でも謎ですが、かなりのページが彼自身の創作によって埋まっていることは容易に想像できます。作中のアーサーは、サクソン人を破り、ブリテン島を主軸として他のヨーロッパ諸国にまたがる大帝国を建設した人物として紹介されていました。アーサーの父ペンドラゴン、魔法使いマーリン、王妃グィネヴィア等の物語の主要な登場人物や王自身の死や旅立ち等の詳細は「列王伝」の中で既に紹介されており、12世紀の詩人クレティアン・ド・トロワは物語の土台に有名な聖盃の物語を加え、アーサー王のエピソードそのものを中世英国に置き換え、騎士道物語のテーマの一つとして社会に定着させることに成功しました。王の実在性についてはその後も議論が続いており、特にその実在を支持する書物の中には、王をブリトン人たちを率いてサクソン人と闘い抜き、一日に960人の敵を倒して大勝利を収めた驚異的な英雄として紹介しているものも存在します。

同じ王名を持つ二人の国王の肖像を表裏に描く奇跡的なモダンコインの登場

英国ロイヤルミントが2023年にリリースした「神話と伝説シリーズ」は、英国史上の永遠の伝説であるアーサー王と、王のエピソードにまつわる主要な登場人物を取り挙げる画期的なコインコレクションです。今回は、同コレクションの第1弾として発表された「アーサー王」をご紹介させていただきます。歴史の波に埋もれてその風貌さえも定かではないアーサー王ですが、当コイン裏面には英国ロイヤルミント屈指の実力派デザイナー、デヴィッド・ローレンスが再現する勇壮なアーサー王の肖像が描かれています。伝説の宝剣「エクスカリバー」を手にする国王の堂々たる姿は壮観であり、実在・非実在を問わず伝説の名君の魅力を余すところなく表出しています。肖像の背後に挿入されている居城ティンタジェルを配した風景が実に素晴らしく、観る者に古代への憧憬を抱かれることでしょう。コイン表面には今や英国を代表するコイン彫刻家といっても過言ではないロイヤルミントに所属する名デザイナー、マーティン・ジェニングスによる「チャールズ3世の肖像」が描かれています。昨年9月のエリザベス2世の崩御に伴い、英国王位を継承した新国王チャールズ3世の治世初の公式コイン肖像となったこの作品は、現在の国王のありのままの姿を写実的に浮かび上がらせる現代コイン肖像屈指の名作です。国王の愛顧を受けてイギリス連合王国が発行する全てのコインの表面を飾ることになったこの記念すべき肖像の周囲には、「神の恩寵によるチャールズ3世・忠誠の守護者」を意味する定型のラテン語碑文が刻まれており、この一世一代の王位継承に祝意を捧げています。正式な全名を「チャールズ・フィリップ・アーサー・ジョージ」とするチャールズ3世のミドルネームには「アーサー」の名が含まれています。この度、1000年以上もの時を隔てて同じ名を持つ二人の君主の肖像がモダンコインの両面を飾ることになったことは、正に英国貨幣史上の快挙であると断言できます。いにしえの名君アーサー王の名を持つ新国王の治世に生きる喜びを感じさせる、偶然が生んだ奇跡的な名貨の登場を喜ばずにはいられません。