2023 チャールズ3世 神話と伝説シリーズ第2弾 マーリン 100ポンド1オンスプルーフ金貨 未鑑定 箱付き【ご予約承り品】

英国人の心の拠り所として歴史上において受け継がれるアーサー王の伝説

2023年の英国貨幣界が発表した「神話と伝説シリーズ」は、英国史上最大の英雄とされるアーサー王とその伝説に捧げられる名企画です。同シリーズの主役であるアーサー王は、5世紀後半頃に存在したとされるブリトン人の君主であり、現在の英国人の先祖に当たるとされている伝説上の人物です。しかし、アーサー王にまつわる勇壮な伝説の数々は後年創作されたものが殆どであり、王の実在性については今でも議論が続いています。王のエピソードが英国史上の真に偉大なる伝説と見なされるようになったのは中世期のことであり、騎士道のあらゆる理念を体現する9人の英雄から成る「九偉人」の一人として選ばれた時をその起源とします。王の理想は騎士道精神の最たるものと見なされ、英国人にとっては学ぶべき価値のあるものとして受け継がれてきました。九偉人の一人としてのアーサー王は、まず最初に文学によって紹介され、次に彫刻家や画家などの造形芸術家たちによって頻繁に描写され、次第に英国を代表する英雄として認知されるようになります。当時のヨーロッパを見渡しますと、ライバル国フランスがカール大帝を同国の国家的精神と見なしていたことから、英国もまたアーサー王を同国にとっての心の拠り所として崇めるようになりました。14世紀の英国王エドワード3世がアーサー王の物語から「円卓の騎士」の場面を巧みに引用し、自らの意志によって「ガーター騎士団」を創設したことは歴史上でよく知られています。また薔薇戦争の終結後にテューダー朝を創設した15世紀の名君ヘンリー7世は、自身の王位を正当化するために王太子をアーサーと名付けたほどでした。不運なことに王太子は夭折し、次男のヘンリー8世が王位を継承したため、アーサーの王名を持つ国王の誕生には至りませんでした。1930年代には中世の騎士道の理念とキリスト教的理想を推進する目的で「円卓の騎士友情騎士団」が組織されましたが、これはアーサー王のエピソードが20世紀以降も多大なる社会的影響力を持つものであることを表しています。我が国日本でのアーサー王伝説受容の歴史は未だ浅く、明治期の文豪、夏目漱石がアルフレッド・テニスンの「シャロットの女」や「ランスロットとエレイン」等の諸作品を元に短編を書いたことが始まりです。

アーサー王の神格化された存在感をより鮮明にする脇役マーリンを描くシリーズ第2弾

今回は、新コインシリーズ「神話と伝説」の第2弾として英国ロイヤルミントがリリースした「マーリン」をご紹介させていただきます。アーサー王の伝説との繋がりを持つマーリンは、元々12世紀の歴史書「ブリタニア列王伝」に魔術師として登場していました。王の父でブリテン王のユーサー・ペンドラゴンを導き、有名かつ謎の石碑群「ストーンヘンジ」を建築した人物として同書に描かれていました。その後の文学作品ではユーサーの子のアーサー王の助言者としても描写されるようになります。アーサー王の伝説の主要な登場人物としては比較的後期の創作であるマーリンですが、15世紀テューダー朝の始祖ヘンリー7世がマーリンの予言を元に自身を「予言の子」「赤い竜の血を引くウェールズ王」と位置付けたため再び注目され、グレートブリテンを代表する典型的な魔術師と見なされるようになりました。ラテン語で著された「ブリタニア列王伝」では、「アンブロシウス・メルリヌス」というラテン語名で紹介されていますが、これを英語読みしますと「アンブローズ・マーリン」となります。当コイン裏面には、肩に叡智の象徴であるフクロウを従え、片手に賢者の象徴とされる杖を持つ老人の風貌を湛えたマーリンの姿が描かれています。そしてコイン表面には、2022年9月8日のエリザベス2世の崩御に伴い、74歳の高齢にて英国王位を我がものとした新国王チャールズ3世の左向きの肖像が見られます。現代ロイヤルミントを代表する名匠マーティン・ジェニングスの多彩な表現力が創造したこの厳選された作品は、現時点における英国コインポートレートのスタンダードな傑作として、人間チャールズ3世の真摯な姿をコイン上に投映しています。アーサー王の人気は今日国境を超えていると断言できます。その文化的影響力は時が経つほどに増大しており、現代における王の人気は過去の伝説上の王の存在感を遥かに上回っていると言えます。ロイヤルミントの英断によって創始されたこの「神話と伝説シリーズ」の第2弾に当たる当コインは、重要な脇役であるマーリンを裏面に描くことによって、アーサー王の神格化された存在感をより鮮明に再現することに成功しています。