1937 エドワード8世 即位記念 銅製ハイレリーフ

「王冠を賭けた恋」の主人公エドワード8世の美しい横顔を刻む芸術性豊かな記念品

1936年1月、ジョージ5世の崩御に伴い、王位を継承することになったエドワード8世。曾祖母のヴィクトリア女王の時代に全世界に版図を広げた有史以来最大の帝国を受け継ぐことになった国王でしたが、独身のまま即位した王の周辺では数々の噂がまことしやかに囁かれていたことも事実です。中でも既婚者のアメリカ人女性ウォリス・シンプソンとの恋愛は「王冠を賭けた恋」と称され、王室史上最大のスキャンダルとして当時の新聞のゴシップ欄を賑わせていました。「国王陛下は近々シンプソン夫人と添い遂げられるのではないか」と噂する国民は国王の動静をじっと見守っていました。国王に何としてもシンプソン夫人との結婚を思いとどまらせようと英国議会が説得を重ねたものの、国王の信念は実に固く、二人の結婚は時間の問題でしかなくなります。恋と王位を両天秤にかけることを余儀なくされたエドワード8世ですが、あくまでも最後まで王位の継続を希望していたと言われています。最終的に議会によって説得された国王は、遂に同年12月11日、英国全土向けのラジオ放送にて自身の退位を公式に宣言しました。ラジオ放送に先駆けて開かれたウィンザー家の家族会議の席で、王の弟のアルバート王子がジョージ6世として新国王となることが決定され、長女のエリザベスもそれに従って王位継承権第一位の保持者となりました。放送を通じて英国民に永遠の別れを告げたエドワード8世は、ラジオ放送の同日深夜には特別に用意されていた船に乗り込み、後ろを振り返ることなく愛するウォリス夫人の待つ滞在先のフランスに向けて出航しました。僅か11か月間足らずの在位期間の果てに翌年に予定されていた戴冠式を待たずして突然退位することになったエドワード8世。一般的には記念コインの発行が無かったとされる王の在位期間ですが、退位後の1937年にはロイヤルミントが王の在位を記念して特別プルーフコインのセットを発行しました。セットの目玉とされていたのは表面にエドワード8世の美しい肖像を描く5ソブリン金貨で、博物館の所蔵品を含めて現在僅か6点のみの現存が認められている歴史的な大珍品です。そのうちの一点が2021年3月にアメリカ合衆国のダラスで開催されたオークションにおいて史上最高落札値を記録し、2億７千万円の値を付けました。また同年10月のモンテカルロのオークションに再出品された際には3億1千万円にて取引され、再び最高落札値を更新して世界を驚嘆させました。英国貨幣史上の真の伝説とされるこの5ソブリン金貨ですが、即位当時のエドワード8世の美しい横顔を描く銅製のハイレリーフがソブリン貨発行とほぼ同時期の1937年に記念品として製造されていたことは意外と知られていない事かも知れません。今回ご紹介させていただくこのハイレリーフは、1937年の製造から既に86年を経過するコレクターズアイテムとしてヴィンテージに属するものです。銅製であるにもかかわらずこの時代の物としては保存状態が極めて良好であり、今となっては得難いコイン・アクセサリーとして、また英国王室関連の記念品として、コインコレクターの秀逸なコレクションを一段と引き立たせることでしょう。あと14年後には製造から100年を迎え、真のアンティーク品となる運命を担うこのハイレリーフ。「王冠を賭けた恋」の主人公である歴史上のエドワード8世ゆかりの芸術品として、コインコレクションに歴史的な重厚感と精彩をもたらすこと請け合いです。