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エリザベス2世のご崩御に際しての哀悼文

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株式会社コインパレスは、2022年9月8日のエリザベス2世女王陛下のご崩御に際し、新国王陛下、新王妃陛下並びに他の王室メンバーの方々と王室職員の方々、そしてイギリス連合王国と連邦関連諸国の国民に対し、謹んで深い哀悼の意を捧げます。

 

We express our deepest condolences to His Majesty the King, Her Majesty the Queen Consort, and all the members of the British Royal Family and their households, and the people of the whole of the United Kingdom and the Commonwealth on the passing of Her Majesty the Queen, Elizabeth Ⅱ on 8 September 2022.

 


 

 

現代の伝説エリザベス2世の70年7か月に及んだ歴史上稀に見る長期在位は、常に国家としての英国の発展と共にあったことは忘れられない事実です。

1952年2月6日の父王ジョージ6世の突然の崩御により、訪問地ケニアの大地にて夜明けと共に慌ただしく幕を開けた女王の治世でしたが、即位に先駆けて21歳の時に英連邦諸国に向けて放送された女王のスピーチの内容は、即位後の女王が実際に辿った運命の予言として今、これまでにない注目を集めています。

「私は、私の人生が長くとも短くとも、我々が属するところのこの偉大なる国家のために我が全生涯を捧げます」。

この力強いスピーチの内容は、そのまま女王の終生の目標となり、神聖なる約束は死守されることになります。

女王はその生まれながらの聡明さと品格を伴って夥しい数の公務をこなされましたが、全世界に英国の素晴らしさを発信され、過去に英国が果たしてきた歴史的大義の重要性を改めて世に問いかける役割を十全に担われました。

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至る所に第2次世界大戦後の荒廃の跡が残る1950年代初頭の英国にて期待とともに王位を推戴されたエリザベス2世。

即位の翌年、1953年に行われた連邦を挙げての壮麗豪華なる戴冠式は、戦後の困窮に疲弊していた英国民の生活に無限の光明をもたらし、英国の輝ける未来を予期させるに相応しいものでした。

会場となったロンドンのウェストミンスター寺院は、1066年12月25日のウィリアム征服王の戴冠式以降、約900年間にわたって歴代英国王の戴冠式を見届けて来ましたが、女王はその39番目の君主として1953年6月2日に戴冠されたことになります。

その感動の思い出から半世紀以上もの歳月を経て、本年2022年2月6日には在位70周年「プラチナジュビリー」を迎えた唯一の英国君主として讃えられました。

また去る6月には、世界は公式行事としての「プラチナジュビリー」を目の当たりにし、英国王室の権威に対する認識を深めるまたとない機会を得ました。

しかし、この至高の瞬間に至る女王の70年間の治世は決して順風満帆であった訳ではありませんでした。

チャールズ皇太子とダイアナ元妃の離婚と、それに続く元妃の事故死、ウィンザー城の火災と膨大なる損失、孫のヘンリー王子の王室離脱、そして最愛の夫フィリップ殿下との永遠の別れ等、女王個人の生活のみに着目しても、いかに女王が数々の困難を乗り越え、ウィンザー家の当主として王室の権威を守り抜かなければならなかったかを物語っています。

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全世界を舞台として英国の象徴として公務を遂行し続けた気高い女王の姿に、世界は英国の不屈の精神を見い出したことでしょう。

それは長大なる歴史を誇り、世界文明に貢献した真の大国である英国にして初めて受けることが可能となる最高度の敬意であり、世界の英国に対する限りなき信頼の証でもありました。

政治との適度な距離を保つことを決して忘れなかった女王独自の統治スタイルは、それまでの歴代国王のそれとは一線を画するものであったかもしれません。

王室が代々受け継いできた立憲君主制を厳守し、円滑なコミュニケーションの妙から成り立っていた女王の公務姿勢は、現代における王室の在り方を表す指標として、これまで独自の境地を切り開いてきました。

それは万人に愛されるに値する永遠の英国君主の実像であり、女王自らが身を以って実践して来られた国家元首としての表現手段であったのかもしれません。

偉大なる人物の死は、時として時代の流れに著しい変革をもたらすことがあります。

こと英国に関しては、かつての大英帝国の後裔である集合体としての連合王国と連邦から成立した国家であるがゆえに、70年間の長期在位の後に今日、現実として受け止めるに至った多くの特権を保有する君主の訃報が大きな喪失感をもたらすことが予想され、一つの時代の終わりを告げる事象として受け止める者も少なくないことでしょう。

真の王者の風格と気品を伴って世界を駆け抜けたあの歴史上のエリザベス2世がもうこの世には存在しないという現実をどう受け止めたらよいのか世界は今、途方に暮れています。

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我々日本人にとっても女王は常に身近な存在でした。

1975年の初来日のみの訪日ではありましたが、日本の皇室との信頼関係を確認することに尽力され、広く国民と触れる機会を持たれ、日本と英国の未来永劫の友好関係を約束された後に帰国の途に就かれました。

来日中はテレビドラマの撮影を見学され、また京都では園芸に対する独自の見解を元に、名刹竜安寺の石庭の造形美に対する称賛を惜しみませんでした。

女王の人間としての一面を垣間見ることを許された我々日本人は実に幸運であったと言えます。

女王が地上に残した数々の足跡が英国王室の伝説として、今後数世紀にわたって独り歩きすることと思われます。

そして近い将来、世界がその忘れがたい気品と威厳を心から懐かしむ時が訪れることでしょう。

ここに70年間に及んだ英国君主エリザベス2世の一世一代の偉業を讃えるとともに、その遺徳に対し無限の哀悼の意を捧げたいとの思いを新たにした次第であります。