ご挨拶
アンティークコインのショールーム、コインパレスの室田でございます。
秋たけなわの候、皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
去る9月8日に、96年間の生涯を閉じられたイギリス連合王国の女王エリザベス2世。その治世は70年7か月間にわたり、英国史上の最長在位を記録しました。
同月19日にはロンドンのウェストミンスター寺院にて荘厳な国葬が執り行われ、世界は歴史上に名を刻む名君の最期を見届けました。
その栄光の在位は、1953年以降にロイヤルミントが発行したモダンコインの数々に永遠に刻まれています。
そして先週、新国王チャールズ3世の治世の幕開けを飾る公式コイン肖像と共に、女王の生前の功績を称える3種のコインデザインが発表されたばかりです。
この英国貨幣史上の大変革の時節に際しまして、これまで70年間の長きにわたって我々を魅了し続けてきた女王の在位下に発行されたモダンコインの今後の動向についてのお話を皆様にお届けいたしますので、ご一読いただけますと幸いです。
またコラムの最後には、近日特に話題に上がっている女王の金貨をご紹介させて頂きますので、併せてお楽しみくださいませ。
エリザベス2世 96年間の偉大な歴史が幕を閉じました
2022年9月8日の午後3時10分、イギリス連合王国並びに連邦の君主エリザベス2世は、スコットランド北部にある王室所有のバルモラル城にて永遠の眠りに就かれました。
翌9日早朝(日本時間)の報道各社による女王崩御の一報は、我々日本人のみならず、世界にとって正に寝耳に水であったことでしょう。
本年6月にイギリス連邦を挙げての盛大なるプラチナジュビリー(在位70周年)関連の行事が本国英国を中心に開催された際には、テレビ放送やインターネット配信によって高齢の英国女王の健在ぶりをアピールする論調が目立っていました。
また崩御の2日前の9月6日には、前日に新英国首相に選出されたばかりのリズ・トラス氏自らがバルモラル城に赴き、満面の笑みを湛えた96歳の女王との謁見を果たし、首相としての拝命を受けた矢先の出来事でした。
女王は若き日から自身の死を直視しておられたようで、女王自らの意見を反映した「ロンドン橋作戦」と名付けられた崩御から葬儀までの一連の計画が、早くも1960年代には講じられていたと伝えられています。
そして早くも同月19日には国葬が挙行され、王侯貴族を始め、世界を代表する首脳陣がロンドンに集結し、70年もの長きにわたって世界に貢献した一世一代の名君エリザベス2世の死を悼むと同時に、その無私の心で国家に捧げられた偉大なる生涯を讃えました。
エリザベス2世 在位期間中に発行されたコインの数々
その全治世を通じて世界文明の各方面に多大なる影響を及ぼしたエリザベス2世ですが、その栄光の在位期間に本領を発揮したロイヤルミントを中心とする英国コインの世界も例外ではありませんでした。
近年、「モダンコイン」の別名で知られるようになった女王の治世下(1953年-2022年)にリリースされた比較的新しいそれらのコインは、イギリス連合王国と連邦に君臨したエリザベス2世の在位の証として世に送り出された現代英国史の変遷そのものでもありました。
女王亡き後にそれらの輝かしい来歴を掲げるコインが如何なる意味を持つようになるのか、また今後どのような道を辿ることになるのか、その未来に関する興味と探求心は尽きることがありません。
同時に、より実質的な諸問題、例えば今後の価値推移や相場の変動等については、既にモダンコインを所有しているコレクターや、今後入手を計画している方にとっては単なる興味の対象以上の具体的な重要性を示唆する、いわば最大の関心事であることでしょう。
これ迄にもディーラーを始めとする多くの英国コイン関係者が指摘してきたように、英国モダンコインの価値上昇は一部の例外を除いて緩やかなものであり、世界的なオークションに出品されるような英国アンティークコインの逸品のそれと比較すると近未来投資戦略の一環と捉えられている向きがありました。
これに関して決定的な結論に至るには幾分時期尚早の感は否めないものの、少なくともロイヤルミントを始めとする英国コイン界の新たな動向に着目する限りにおいては、早くも過去70年間にリリースされたモダンコインの明るい未来を鮮明に映し出す幾つかの兆候が見え始めていることも確かです。
コインに描かれたエリザベス2世の肖像の今後の展望
それらの兆しのうち最も重要と思われるものとして、先日発表されたばかりの新英国王チャールズ3世の治世初のコインに関する情報が指し示す、エリザベス女王時代のモダンコインが今後遭遇することになるであろう価値基準の大幅な更新が挙げられます。
偶然とはいえ、新国王初の公式コイン肖像を表面に刻む当コインの裏面の意匠が全て前国王エリザベス2世の治世を偲ぶものであることは驚異的であり、3種の異なるデザインを伴ってのリリースは想定外のことと言わざるを得ません。
英国貨幣史を振り返りますと、前国王の崩御から一定の期間を置いて新国王の公式コイン肖像がリリースされ、それ以降一般化されることは英国貨幣史上の常でしたが、これは今後ロイヤルミントが発行する全てのコイン表面に付随する国王の肖像が、今回のリリースと同様に全てチャールズ3世のそれになることを意味します。
別の言い方をしますと、これまでの全5種のエリザベス2世の公式肖像は今後、基本的には使用されなくなり、それらを描く過去のコインも即アンティークとまでは言わずとも今後、ヴィンテージ、もしくはそれに準ずる扱いを受けることになることが多分に想定されます。
70年と一括りに言いましてもそれは非常に長い年月であり、その間にロイヤルミントが創造した多彩な魅力を備えたあらゆるテーマに基づくコイン裏面のデザインは多岐にわたり、今後、これまでコイン表面に描かれていた女王の全5種の公式肖像と共にそれらが英国貨幣史上の過去の伝説に分類されることによって、これまでには期待できなかった絶大なる付加価値を生むに至ることは想像に難くありません。
この仮説を前提として、過去から現在に至る英国コインの総括的な価値推移を見極めますと、女王の時代のモダンコインの前途洋々たる将来が必然的に浮かび上がってきます。
昨今のアンティークコインを含む英国コインに対する世界的な高評価の源流を辿りますと、2008年に世界を震撼させた未曾有の経済危機を生んだリーマンショックに行き着くことでしょう。
古来「王侯貴族の趣味」として受け継がれてきたコインの収集でしたが、この転機を境として、いかにコインが実物資産としての運用に最適であるかに多くの投資家が気付き始めます。
当然、英国貨幣界も然りで、それ以降の14年間、英国コインは全体として好調な価格推移を遂げてきました。
この度の女王の崩御によって唐突に迎えることになったコイン界におけるエリザベス2世時代の終焉ですが、これがコインによる資産運用の世界に千載一遇の好機をもたらすであろうことに、世界は既に気付き始めているようです。
今後、女王の時代を象徴するそれらのコインが確実な実物資産となり、時を経て更に希少価値を高めることはほぼ確実であるということが貨幣界の定説となりつつあります。
それゆえに、チャールズ3世の肖像に切り替えられることによって、エリザベス2世の公式コイン肖像を刻むコインが新規で発行されることがなくなった今こそが、それらの過去のコインを入手する絶好の機会ということになります。
9世紀のアルフレッド大王の生きた時代以降、1100年以上もの歳月をコイン鋳造に捧げて来たロイヤルミントですが、エリザベス2世の栄光の治世下に発行されたモダンコインの名品の数々にこそ、その存在意義を見いだすことができます。
多彩なラインアップと魅惑的なデザインによってコレクターの購買意欲をそそる独自性はいまだ健在ですが、女王の治世が過去の栄光と共に過ぎ去った後にその激動の70年間を振り返りますと、いかにロイヤルミントが国家や英国王室を歴史の一部分として捉え、卓越したコインデザインによって変転極まりない物語を語り続けて来たかに気付かされます。
そしてロイヤルミントがコイン上に打ち出した優れたデザイン性は、そのまま英国の国家的信頼の証として認められ得るもので、輝かしい女王の時代を象徴するモダンコインの絶対的価値を際限なく高めました。
その伝統は今後も数世紀にわたって延々と受け継がれるとともに、英国コインの歴史を新たに塗り替えて行くことでしょう。昨日のモダンコインが明日のアンティークコインになる可能性を秘めていることを決して忘れてはならないようです。
近日、特にお問い合わせが急増しているモダンコイン一覧
最後に、弊社コインパレスにおいて近日特にお問い合わせ数が急増しているコインをご紹介申し上げます。
チャールズ3世 エリザベス2世追悼記念コイン
先日発売されたばかりの、新国王チャールズ3世の肖像が刻まれたエリザベス2世追悼記念コインです。
弊社コインパレスでは、金、銀、プラチナのラインナップでご予約を承っております。
ヤングエリザベス 聖ジョージ竜退治 ソブリン金貨
1980年から4年間(1983年度版のみ未発行)にわたって発行された、エリザベス2世の第2肖像、通称「ヤングエリザベス」を描いたソブリン金貨。
複数の年度、額面で発行されていますが、1981年と1982年に発行された5ポンド(=5ソブリン)金貨は特に希少性が高く、1981年版は5400枚、1982年版は2500枚しか発行されませんでした。
エリザベス2世がご健在の頃から人気が高く、弊社でも入荷するたびに多数のお問い合わせを頂戴する定番コインでございます。
ミドルエリザベス 聖ジョージ竜退治 ソブリン金貨
1985年に導入された、エリザベス2世の第3肖像、通称「ミドルエリザベス」を描いたソブリン金貨。
女王として円熟の境地を迎えた当時50代のエリザベス2世と、イギリス王室に伝わるティアラ、「ジョージ4世のステート・ダイアモンド・ダイアデム」が描かれています。
2015 エリザベス2世 最長在位記念 10ポンド5オンス金貨
2015年にエリザベス2世が、それまでのヴィクトリア女王による英国史上における最長在位記録(63年7か月)を更新したことを記念して発行された金貨です。
弊社では先日2枚入荷しましたが、1枚は既にご成約いただき、残り1枚のみのご用意でございます。
2002 「馬上のエリザベス」ゴールデンジュビリー 5ポンド金貨
エリザベス2世が2002年に在位50周年「ゴールデンジュビリー」を迎えられたことを記念して発売された金貨です。
裏面に描かれているのは、1953年に発行された戴冠記念コインのデザインを連想される、通称「馬上のエリザベス」と呼ばれる人気の肖像です。
2021 エリザベス2世 女王生誕95周年記念 5ポンド金貨
2021年に、エリザベス2世の生誕95周年を記念して発売された金貨です。
イギリス連合王国4国の国花を背後に、「ロイヤル・サイファ」と呼ばれる国王の王名を省略した紋章が刻まれています。
今後も引き続き高い注目が予想されますので、ご検討中のコインがございましたら、どうぞお早めにお申し付けくださいませ。