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THE FIRST LEGEND
2020年に初登場となったロイヤルミントによる「ミュージックレジェンド・コレクション」は、英国の伝説的なポップスターとその活躍に焦点を当て、世代を超えて高い評価を勝ち取ったその芸術性をコイン上に再現する壮大なる企画です。
その第1弾に相応しい栄誉を獲得したのは、衝撃的デビューから今日に至るまで約半世紀間、英国のロックシーンを牽引したばかりか、世界的にも絶大なる成功を収めた稀代のロックバンド「クイーン」に他なりません。その超絶的人気ゆえに、当コレクション第1弾としての選定は想定の範囲内のことではありましたが、当コレクションの今後の方向性を示唆する見事な決定であったと改めて思います。
長年にわたって同バンドを率いたメインボーカルのフレディー・マーキュリーを筆頭とする才能溢れるメンバーが生み出すその独特の音楽は、1970年代の英国における最新の音楽シーンとポップカルチャーを象徴する瑞々しい感性によって独自の境地を切り開きます。
70年代前半に世界を席巻した空前のハードロック・ブームの潮流と共に誕生したクイーンですが、その後も音楽のスタイルを変化させつつ通算2億枚以上ものアルバムを売り上げ、記録を更新し続けていました。また過去には、ウォール・ストリート・ジャーナル紙による「史上最高の人気を誇るバンド100選」において第3位にランクインし、ローリングストーンズの選ぶ「歴史上最も偉大な100のアーティスト」においても上位入賞を果たし、「ロックの殿堂」入りも実現しました。
異なる音楽的嗜好を持つメンバーが生み出すその音楽的作風は、ロック以外の他の音楽ジャンルの影響が顕著ではあるものの、発表された多くの作品に見られるようにこのバンドならではの表現上の一貫性が認められることも事実です。
1973年に初のアルバム「戦慄の王女」のリリースによって鮮烈なデビューを飾って以来、アルバム制作とライブの両輪にて世界的名声を欲しいがままにしたクイーン。
1985年には20世紀最大のチャリティー公演と銘打って開催された「ライヴエイド」に出演を果たし、その完成度の高いパフォーマンスは聴衆を深く感動させ、絶大なる反響を呼びました。
また1991年にはメインボーカル、フレディー・マーキュリーの壮絶な最期を乗り越えて、英国を代表する伝説のロックバンドとしての不動の地位を確立しました。
デザイナー
クリス・フェイシー
英国生まれ、世界に羽ばたいたクイーンの多彩な魅力を表現する秀逸なデザインによって近年の英国貨幣界における例外的な成功を収めました。クイーンの音楽性をコイン上にデザインとして再現するということがデザイン上の高度なテクニックを必要とすることはもちろんのこと、音楽を肌で感じ視覚化することのできる繊細な感受性が求められることは言うまでもありません。
そのような超難題を克服し、バンドの持つ個性豊かな表現力をコイン上に蘇らせたのは、ロイヤルミントの中堅デザイナー、クリス・フェイシーの創造性豊かな才能です。
音楽という目に見えないものを可視化し、バンドの個性をデザインによって表現するというこの大胆な試みは、当コインの裏面を見る限りにおいて成功しているように思われます。
クイーンの音楽性と芸術的成果を最もシンプルな手法によって描き出す当コインの裏面には、「ボヘミアン・ラプソディ」の出だしの音が押されたキーボード、ベース、ギター、ドラムなど、バンドの主要な楽器がイラスト化され、担当アーティストの強烈な個性とプライドを強調しています。とりわけ裏面中央を左右に長く伸びるマイクは、長年メインボーカルとして活躍した今は無きフレディー・マーキュリーに捧げられるものです。その余りにも早すぎた死は、クイーンの名と共に永久に記憶されることでしょう。
マイクの上部にはバンド名を示すアルファベットが刻まれていますが、ハードロックバンドながらクラシックの素養を身に付けていたこの特殊なバンドならではの洗練と審美性を感じさせます。
また裏面下部のドラムにはイラスト化された不死鳥フェニックスが描かれていますが、これはかつてロンドンの美術学校でイラストを学んだ経歴を持つフレディーがデザインしたもので、彼の繊細な美意識を物語っています。燃え尽きた後に灰の中から蘇生すると伝えられる伝説上の鳥フェニックスの意匠は、英国から全世界に向けて羽ばたいた奇跡のバンド、クイーンの不滅の伝説を象徴しています。