2024 Trial of the Pyx 1オンス シルバーバー 未鑑定 パッケージ付き

過去800年間の英国貨幣史を見届けてきた伝統行事としての「トライアル・オブ・ザ・ピクス」

イギリス連合王国内で新たに発行されたコインを精査する法的な儀式として国際的に注目されるトライアル・オブ・ザ・ピクス。その起源は12世紀に遡り、今日まで800年以上にわたって脈々と継承されてきました。現在、英国王立造幣局（ロイヤルミント）が新たに発行する貨幣は全て製造過程において一定の基準を満たしたもののみであり、万全を期して世に出荷されているため、トライアル・オブ・ザ・ピクスのような伝統的な儀式は形式上のものとして取り扱われているに過ぎないという意見もあります。しかしながら、伝統と格式を重んずるイギリスのような国家において、このような長い歴史を有する儀式は年に一回開催される歴史イベントとしての性格が強く、それ故に中世から途切れることなく脈々と受け継がれてきたのではないかと思われます。同儀式が毎年取り扱うコインは数千枚に上りますが、それらの中には一般流通貨と記念コインの双方が含まれます。現在は毎年開催されるトライアル・オブ・ザ・ピクスですが、「1971年貨幣法」が制定されるまでの数世紀の間は数年に一回の割合で開催されていたに過ぎず、数年間に発行されたコインがある年に一挙に精査されていたことになります。金属精査係の役割を担う高等裁判所判事と金融界の中心人物がロイヤルミントから提出されたコインを精査する前に、まずロイヤルミントの責任者でもある主任がそれらの精度を見極めます。この儀式に用いられる木製の箱は特に重要な役割を果たすものであり、同儀式の名称「ピクス＝Pyx」の由来となっています。Pyxはギリシャ語のpyxisから派生した語で「木箱」を意味します。1179年の記録によりますと、財務大臣によって承認された貨幣の重量と品質は、調整を加えられる目的のために男爵位を持つ財務卿の監督下に置かれます。この時、新規で発行された10ポンド分の銀貨の内1枚をロイヤルミントの主任が取り置くことになりますが、これによって3か月に1回それらのコインが精査されていたことになります。1279年5月に著された書籍「財務係の赤本」の「新しい貨幣の形」という部分には通常の儀式の様子が描写されていますが、それによりますと、ロイヤルミントの主任は基準を満たさない貨幣に関する責任を負うことになっていたとのことです。コインは通常、主任と監督者のみが管理する2つの鍵が掛かっている木箱に収められ、中身は通常年4回精査されていたとのことです。エドワード1世治世下の1282年には王国内のあらゆる都市でこの儀式を行うよう財務卿男爵たちに勅令が発布されました。現在のトライアル・オブ・ザ・ピクスの運営上の諸条件は1971年に制定された新貨幣法に基づくものです。特定の手続きが評議会法によって決定されますが、「1998年トライアル・オブ・ザ・ピクス法」がこの種の最も最近に制定された法に当たり、2005年、2012年、2016年には追記事項が加えられました。「1870年貨幣法」が制定されるまでの間、トライアル・オブ・ザ・ピクスはウェストミンスター宮殿（現国会議事堂）で行われていましたが、当時儀式に出品されていたコインはウェストミンスター寺院の「ピクス・チャペル」にて一時的に保管されていました。そしてこの新貨幣法の制定と同時に、同儀式はロンドン金銀細工師組合の本拠であるゴールドスミス・ホールで開催されるようになり、それ以降同ホールは会場として定着しました。

トライアル・オブ・ザ・ピクス出品の栄誉に浴する1オンス・シルバーバーの逸品

今回ご紹介の作品は、2024年度のトライアル・オブ・ザ・ピクスに出品された来歴を持つ由緒ある名品で、未鑑定品の1オンス・シルバーバーとなります。バーの表面には現国王チャールズ3世の左向き肖像が掲げられており、当作品の高品質を保証しています。2022年の代替わりに際して新たに英国貨幣の顔となったこの傑作肖像は、現代ロイヤルミントを代表する名デザイナー、マーティン・ジェニングスの代表作として知られているものです。写実性と共に人物の内面を浮かび上がらせる表現力は圧巻であり、新国王の人間らしさと魅力を正確に引き立てているように思われます。国王自身のお気に入りとの情報もあるこのポートレートは、21世紀前半を代表する傑作コインポートレートとして、今後ますます英国貨幣界の伝説となることでしょう。さらに肖像の左側には、国王に代わって王室側の代表として同儀式に参加したマスターのサインも見られ、同作品の眼目となっています。さらに裏面には1100年の長大な歴史を有する英国最古の企業とされるロイヤルミントのオリジナルロゴが掲げられており、その上純銀であることを証明するFine Silver 999.9の表記が刻まれており、感動もひとしおです。実物資産としての将来性はもちろんのこと、第一級の歴史遺産としても貴重な同ゴールドバーは、実益を兼ねた投資対象として、コレクターを始め、世のすべての投資家に贈られるべき堂々たる芸術品です。