(1937) エドワード8世 ファンタジー1フローリンピエフォー白銅貨 記念メダル PCGS PR66DC FC52b

王位を賭けて愛のために戦ったエドワード8世の波乱の生涯

前国王ジョージ5世の崩御を受けて1936年に即位し、僅か11カ月足らずの在位期間の後に退位するに至ったエドワード8世。離婚歴のあるアメリカ人女性ウォリス・シンプソンとの情熱的な恋愛は「王冠を賭けた恋」と称され、20世紀の王室史上最大のスキャンダルとして人々に記憶されています。自身の王位はそのままに、ウォリス夫人を英国王妃として王室に迎え入れることを切望していたエドワード8世でしたが、議会はその請願を受け入れようとはせず、王に早急な退位を進言するに至ります。夫人との恋と王位を両天秤にかけたエドワード8世でしたが、結果として夫人との結婚を選択し、退位の意向を固めます。1936年12月11日の公開ラジオ放送にて自身の苦しい胸の内を語った国王は、不本意ながら王室を去ることになった自身に対する国民の理解を求めます。退位文書に署名した後、同日深夜にポーツマスの港に姿を現した元国王は運を天に任せ、亡命先フランスに向けて静かに旅立ちます。退位後はウィンザー公爵の称号を得るに至り、王室とは適度な距離を保ちつつ亡命先にて悠々自適の人生を送ったと伝えられています。王室は、国王に退位に追り、病弱な国王の弟ジョージ6世の即位を促したウォリス夫人の存在を決して認めようとせず、1952年に即位した元国王の姪に当たるエリザベス2世も長年にわたり夫人に公爵夫人の称号を授与することを拒絶していたほどでした。そして時を経て女王が初めて元国王に歩み寄る姿勢を示した時、ウィンザー公爵は既に臨終の時を迎えつつありました。ウィンザー公爵こと元英国王エドワード8世は1972年、亡命先のパリにてその波乱に満ちた生涯を閉じます。異国の地で最期の時を迎えることになった元国王ですが、英国王の崩御に際する慣例である壮麗豪華な葬儀が営まれることもありませんでした。パリの地でひっそりと息を引き取った元国王の唯一の慰安は、死の瞬間まで傍らで寄り添った愛するウォリス夫人の存在のみであったのかもしれません。

ファンタジー・メダルのデザインの源となった名品「エドワード8世・5ソブリン金貨」

世紀の大恋愛によって歴史に名を刻むことになったエドワード8世ですが、英国貨幣史上においてもその存在は伝説化しています。即位の翌年1937年5月の戴冠式を待たずして退位したエドワード8世ですが、戴冠記念のためのコインの発行は無かったものの、1937年1月には在位の記念品として関係者用のプルーフコインセットがロイヤルミントによって限定的に発行されていました。貴金属・卑金属13点のコインから成るこの見事なコインセットは限定5セットのみの発行が記録されているのみで、現英国女王がそのうちの1点を所有し、後の2点は大英博物館と、同機関からの永久貸与の形でロイヤルミント博物館が所蔵し、4点目はタイラント・コレクションに収められている限りです。そして最後の1セットの中の5ソブリン金貨のみが単独で個人所有の対象として現存しますが、長年の間その存在は謎に包まれていました。昨年3月にダラスで開催された「パラマウント・オークション」での出品によって注目を集め、さらに同年10月のモンテカルロでの再出品においては英国貨幣としての史上最高落札値を更新し、世界の耳目を惹きつけたことは記憶に新しく残っています。3億1000万円の天文学的な落札値は世界を驚嘆させるのみならず、この英国貨幣の代表作の真価を改めて世に問い正す貴重な機会となりました。

熱烈なファンの要望に応えて生まれたエドワード8世ファンタジー・メダル

その極端な希少価値ゆえに市場で目にする機会がほとんどないエドワード8世関連のコインですが、熱心な英国コインのコレクターのフラストレーションを解決する手段の一つとして生み出されたのが、今回ご紹介させて頂く作品に代表されます一連のファンタジー・コイン・メダルの類です。メダル裏面を見てみますと、エドワード8世退位の年の翌年の西暦が刻印されていますので、このメダルがファンタジー作品の一種として主に観賞用として入手されることを想定して制作され、安心して楽しめるものであることが窺えます。中央には、まず下部に英国王位の永遠の象徴である大英帝国王冠が掲げられています。戴冠式を待たずして退位したエドワード8世がこの王冠を実際に頭上に戴くことはありませんでしたが、短いながらも英国に君臨した実在の国王の権威を象徴するものでもあります。そしてその上には剣と王笏をかかげる有冠のライオン「イングランドのライオン」が悠然と鎮座し、辺りに威風を放っています。メダル表面には在りし日の英国王の左向きの凛々しいポートレートが刻まれ、国民に愛され、そして死の瞬間まで英国を愛し続けた元国王の人間味あふれる魅力を見事に表出しています。肖像の周囲の格調高い碑文はラテン語で刻まれていますが、「神の恩寵による大英帝国国王エドワード8世」、そして裏面の「忠誠の守護者にしてインド皇帝」を意味するヴィクトリア期以降の英国王位に帰属する長大なる身位が連なっています。熱烈なファンの要望に応えて制作されたと思しき当メダルは、英国史の一時代を築いた歴史上の人物エドワード8世の思い出に捧げられるべき想像力豊かなメモラビリアです。

品番	4143
鑑定番号	29986158 現在のPCGS鑑定数はここをクリック下さい
グレード数	PR66DCAM
タイプ	ピエフォー
表面	エドワード8世
裏側	王冠とシールド
発送元	日本国内から発送