2023 チャールズ3世 国王誕生75周年記念 5ポンドプルーフ金貨 未鑑定 箱付き

英国王室の伝統と革新を強く印象付けた2023年5月6日挙行のチャールズ3世の戴冠式

2022年9月8日に崩御した前英国君主エリザベス2世に代わってイギリス連合王国を新たに率いることとなった新国王チャールズ3世。1953年にロンドンのウェストミンスター寺院で挙行された前国王の戴冠式は、第2次世界大戦後の荒廃が色濃く残る英国全土に夢と希望をもたらしました。現在残っている戴冠式当日に撮影されたと思しき映像を観ていますと、モノクロ映像ながらも、満を持して新国王エリザベス2世を迎えることとなった英国の歓喜が生々しく伝わってきます。歴史的にも空前の成功を収めた女王の戴冠式でしたが、当時5歳であった現国王チャールズ3世が臨席されていたことは意外と知られていない事実かも知れません。ちなみに妹君のアン王女の参列は叶わなかったそうですが、誕生と共に王位継承権保持者となり、将来の君主と見なされていたチャールズ国王の出席は当然のことながら優先されていたのかもしれません。即位後70年間の治世を謳歌し、崩御後は伝説の存在と見なされるようになった感のあるエリザベス2世ですが、その70年間は英国にとっての激動の時代でした。戦後にはかつての大英帝国から新生グレートブリテン連合王国へと劇的な転身を遂げた英国は、その後、驚異的な経済復興を遂げ、老大国としての矜持を奇跡的に保持することができました。そして誰よりも国家の繁栄の象徴として国際的に活躍したのが女王自身でした。20世紀後半から21世紀にかけて英国女王として君臨した女王の傍らで常に公務を補佐し、現代英国史の全貌を見届けた人物こそ、実は息子である現在のチャールズ国王自身では無かったかと思われます。2022年の代替わりに伴い、74歳の高齢にて英国王位を継承したチャールズ3世。母エリザベスの一世一代の戴冠式を目を輝かせて無心に見届けていたあの時の5歳の少年は、その後69年間にわたって英国の変貌を見届けたあと、遂に君主となって玉座に上り詰めました。2023年5月6日に執り行われたチャールズ国王とカミラ王妃の戴冠式は、荘厳な趣を湛えながらも国王御自らの洗練された趣味が反映された見事なもので、21世紀ならではの創意工夫に満ちた演出が後々にまで記憶される意味を持つ深い感動をもたらしました。伝統を踏襲しながらもそれに囚われることなく、音楽と映像を最優先した式の進行によって、世界中のあらゆる人々の共感を得るに相応しい説得力のある開催を実現したことは、現代英国のみが可能とした正に奇跡の体験でした。

自然順応の人として知られるチャールズ3世に相応しい誕生75周年記念貨の愛すべき意匠

2023年11月14日に満75歳の誕生日を迎えられるチャールズ3世。英国ロイヤルミントは新国王の戴冠式後初の誕生日を祝してここに一枚の美しいコインを創造しました。まず表面には昨年の代替わり以降、ほぼすべての英国コインの表面を飾ることになった「チャールズ3世の第1肖像」が描かれています。写実性と立体感を最大の特徴とするこの現代コインポートレート屈指の傑作は、ロイヤルミントの名デザイナー、マーティン・ジェニングスの才気漲る感性の賜物であることは間違いないでしょう。肖像からは国王の人間的な温かみと魅力がそこはかとなく伝わってきます。肖像の周囲には英国貨幣の伝統を象徴する定型のラテン語碑文が刻まれていますが、唯一の例外は王名の「チャールズ」の部分です。通常ラテン語で表記されるはずの王名ですが、今回は何故かこの部分のみラテン語でチャールズを意味する「CAROLUS」ではなく通常の英語名で表記されており、現代的な配慮が感じられます。そして裏面中央にはチャールズ3世のために新たに制作されたロイヤルサイファ（国王の王名を紋章化したシンボル）、75歳の誕生日を示す「75」の数字、そして歴史的に王室の象徴として受け継がれてきた蜂の紋章が掲げられています。またオークの葉とデルフィニウムがその周囲を飾り、国王の誕生75周年に対する祝意を表しています。若き日より自然尊重の重要性を唱えてきたチャールズ国王は、王太子時代には当時所有していたハイグローブの荘園にてオーガニック植物の栽培に専心されていたことでもよく知られています。動植物をテーマとする新たなコインデザインの傑作の誕生は、環境問題、特に絶滅の危機に瀕している動植物の保護にも熱心なチャールズ3世に相応しいテーマとして、今後、脚光を浴びることは間違いありません。