オーストラリア 1896 ヴィクトリア女王 オールド（ヴェールド）ヘッド 聖ジョージ竜退治 1ソブリン金貨 未鑑定

・アンティークコインのため、1枚1枚に異なる風合い、変色、摩耗、傷などが見られます。それぞれのコインが持つ個性豊かな表情をご堪能いただけます。

　（これらを理由とするお客様都合の返品・交換はご容赦くださいますようお願い申し上げます。）

コインの製造において英国本国に引けを取らない高水準を確立していたヴィクトリア期のオーストラリア

大自然を背景とする雄大な景観によって今も世界を魅了し続ける南半球の大国オーストラリア。今から約6万年前にこの未知の大地を原住民アボリジニ―が定住の地と定めた時、オーストラリアの長大な歴史は静かに幕を開けました。長い氷河期を経て自然の脅威に晒されながらも、自然との共存によって大陸と同化しようと努めたアボリジニーたち。それが太古の昔から少なくとも数万年間にわたってオーストラリアで繰り広げられていた日常の光景でした。しかし17世紀になり、オーストラリアを取り巻く情勢は大きく変化します。1606年にオランダ人探検家がオーストラリア大陸を発見して以降、断続的にヨーロッパ諸国との関連を保ち続けていたオーストラリアですが、とりわけ英国との関わりは深く、植民地としての開拓時代を経て、最終的には英国の連邦を構成する国家へと大変貌を遂げるに至ります。ジョージ3世治世下の1770年に英国が同大陸の東半分の領有権を主張したことを皮切りに、1788年以降はニューサウスウェールズ州における植民地開拓が本格化します。その後、英国系住民の人口の増加に伴い、5つの自治王領植民地が新たに設立され、オーストラリアにおける英国人の影響力は急激に増大します。19世紀のヴィクトリア女王の時代には全世界に版図を広げる大英帝国を構成する重要な国家として興隆期を迎えるオーストラリア。貨幣の鋳造においても本国英国に準ずる高度な技術を踏襲していた19世紀当時のオーストラリアですが、1816年にはシドニー造幣局が、また1899年にはパース造幣局が創設され、英国本国に頼ることなく、オーストラリア独自のコイン生産技術を確立します。英国貨幣を模倣する傾向が見られた創生期のオーストラリアコインですが、ヴィクトリア期のオーストラリアでは英国本国には存在しない同国ならではの興味深いコインデザインも多く制作されるようになります。その中でも特に人気の高いものとして、オーストラリア特有の植物「バンクシア」で編んだリースを頭上に掲げる若きヴィクトリア女王のポートレートが挙げられます。この名デザインは、当時のオーストラリアが大英帝国の主要構成国として英国に倣ってコインを製造していたことを証明しており、完成度の点において本国に引けを取らない製作技術と高い芸術性を兼備していたことを物語っています。

オーストラリアが英国本国に敬意を表して世界に贈るソブリン金貨の名品

今回ご紹介させていただくソブリン金貨は、ヴィクトリア女王の治世最晩年の1896年に制作された英国アンティークコインの逸品です。コイン表面に描かれているのは1893年に当時の英国を代表するコイン彫刻家でメダル制作者として名を馳せていたサー・トマス・ブロックが製作した「オールドヘッド」の通称によって広く知られている傑作ポートレートです。この作品は、1887年のヴィクトリア女王のゴールデンジュビリー（在位50周年記念）に際して発表されたコイン肖像「ジュビリーヘッド」に代わって製作されたものであり、女王の公式コイン肖像の第三作として発表されました。1861年に最愛の夫であったアルバート公爵に先立たれた女王でしたが、その後、約40年間、公爵の喪に服していたことは半ば伝説化しています。服喪を象徴するベールを頭上に着用していることから「ベールドヘッド」と呼ばれることもあるこの優れた肖像は、1896年に迎えた在位60周年記念の祝賀行事「ダイアモンドジュビリー」を待たずして発行されましたが、これには諸説があり、ダイアモンドジュビリーを3年後に控えた女王が自身の高齢ゆえにそれを待たずして新規のポートレートの制作とリリースを所望したというのが最も有力な説のようです。コイン裏面には、英国貨幣の永遠の主題の一つとして今でも人気の高い「聖ジョージの竜退治」が描かれています。ローマ帝国時代に実在した殉教者聖ゲオルギウスを意匠化したこの有名なコイン肖像は、今日まで歴代国王のために制作されたソブリン金貨の裏面を飾ってきました。ナポレオン戦争後に荒廃していた経済を立て直すために導入された金本位制の流れに沿って、新規貨幣の裏面デザインとして採用された来歴を持つこの優れたデザインは、当時のロイヤルミントを代表する大彫刻家ベネデット・ピストゥルッチの生涯最大の傑作として誕生しました。発行から一世紀以上もの歳月を経た正真正銘のヴィクトリアン・アンティークコインの範疇に入る当コインは、19世紀のオーストラリアが英国本国のロイヤルミントに敬意を表して世界に贈った特筆すべき名作です。