本 書籍 『The Gold Sovereign Series』Steve Hill著

著者 ‏ : ‎ Steve Hill

発売日 ‏ : ‎2024/08/31

言語 ‏ : ‎ 英語

単行本 ‏ : ‎ 304頁フルカラー

ソブリン金貨の歴史的全貌を伝える第三版改訂版の満を持しての登場

英国貨幣界において最古の歴史を誇る1666年創業のスピンク社は、業界随一のコインディーラーとしてイギリスコインを取り扱ってきた長年の実績とコイン関連の各種書籍の出版によって、これまで貨幣界において中心的な役割を担ってきました。英国金貨の最高位に位置するソブリン金貨は、15世紀のヘンリー7世の時代に誕生した法定金貨として知られています。同社が毎年発行している「The Standard Catalogue to the Gold Sovereign」は、ヘンリー7世時代のオリジナル・ソブリン金貨から、2022年の代替わりに際して英国王位を継承したチャールズ3世の時代までの歴代ソブリン金貨を網羅し、豊富な解説と共に歴史学と貨幣学の領域からそれらの名品を分析する高度な専門書です。当書のオリジナルは、英国貨幣研究家マイケル・A・マーシュが執筆したものですが、この度の第三版改訂版は現代英国を代表する貨幣学者で、数多くのコイン関連書籍の執筆経験を有するスティーブ・ヒルによる最新版です。「スタンダード・カタログ」の呼称の通り、コインコレクターのニーズに応える奥行きのある情報量と博物学的な価値を有するカラー写真の掲載によって、当書の主題である「ソブリン金貨」という一貨幣ジャンルをあらゆる角度からスポットを当てて際立たせています。とりわけヘンリー7世からジェームズ1世までの治世下に発行されていたオリジナル・ソブリン金貨に関する情報が豊富で、それぞれの国王の時代のソブリン金貨にまつわる歴史的背景や発行に至った経緯などが詳細にわたって語られている個所は必読に値することでしょう。ジェームズ1世の即位と共に一旦歴史の表舞台から姿を消したソブリン金貨ですが、19世紀初頭のナポレオン戦争後には国内の経済を再建する目的で金本位制を主軸とする新たな貨幣制度が導入され、その流れに沿って全く異なる貨幣ではあったものの、ソブリンの名によって新貨幣が再び発表されたことは歴史的な事実です。当書においては「モダン・ソブリン」の名の下に19世紀以降の主要なソブリン金貨のラインアップが紹介されていて圧巻です。これは現代のチャールズ3世の戴冠記念品に至るソブリン金貨の変遷を物語る重要な役割を果たす部分であり、本文の大部分を占めています。ソブリン金貨は現代においては重要なコレクターズ・アイテムとして認知されていますが、巻末にはコレクター必見のソブリン金貨のためのオーセンティックなアンティークケースなどが紹介されていて心躍るばかりです。過去も現在も、つまり15世紀から17世紀にかけてのオリジナルも19世紀以降の新生ソブリン金貨も、それぞれの時代を代表する英国の法定金貨として受け継がれていたものですが、その源流を知る上で当書籍の果たす役割は大きいものです。タイトルの通りのカタログとしての機能性に止まらず、英国金貨の最高位に位置するソブリン金貨の歴史的全貌を知る上でも貴重な一冊であることは間違いありません。その点からも、この度の第三版改訂版としてのリリースは意義があり、英国貨幣全体に寄与する貴重な文献であることは間違いありません。改めて発行元のスピンク社と改訂版著者のスティーブ・ヒル氏に敬意を表したいと思います。