1953 エリザベス2世 エリザベス2世戴冠記念 クラウン白銅貨 PCGS PR65CAM

しかし、1950年代は新しい英国が誕生した時期でもあり、戦後の耐乏生活から回復に向かい始めていたことも確かです。新旧の価値観が入り乱れる時節に満を持して執り行われた戴冠式は英国の輝かしい未来の前兆であり、若く美しく誠実な新女王は英国の新時代の到来を告げる役目を果たしていました。かつて女王の妹のマーガレット王女は「戴冠式が行われたころは不死鳥のような時代でした。灰の中からあらゆるものが蘇り、しかもどんどん良くなっていったのです」と感慨深く当時を振り返っていました。イングランド国教会のお膝元であるロンドンのウェストミンスター寺院は、1066年のハロルド2世の戴冠式以来、全ての歴代国王の戴冠式が行われた場所として知られています。推定300万人もの観衆が新女王の姿を一目見ようとロンドン中心部に集結し、女王を乗せた儀装馬車、ゴールド・ステート・コーチは戴冠式の会場へと歩を進めていました。

若き日のエリザベス2世の輝かしいオーラを永遠に刻むアニバーサリーコインの極致

1953年、エリザベス2世の世紀の戴冠式の年に発行された当5シリング貨は、若き日の女王の気品と今は無き戴冠式当時の古き良き英国の面影をノスタルジックに表現する最も古い時代に属するモダンコインの佳作です。

表面

コイン表面には戴冠式当時若干27歳であった自身の愛馬ウィンストンに乗ずる制服姿のエリザベス2世が写実的に描かれています。英国屈指の馬主としても名高い女王陛下ですが、毎年6月中旬に開催される王室主催の競馬のイベント「ロイヤル・アスコット」の主催者として帽子の花が咲き乱れる場内に登場され、この夏の風物詩において一輪の薔薇の如く優美な存在感と共に自身の所有する馬に見入る姿をお見かけすることがあります。

馬は英国人にとってはある種神聖な動物であり、家畜としての牛とはその価値基準において雲泥の差があります。古来英国人の友であり続けた馬を操る女王の姿ほどに君主としての威厳を感じさせるものはこの世に存在しないことでしょう。

女王の両側には「ロイヤルサイファ」と呼ばれる王名を簡略化したシンボルが掲げられています。「神の恩寵による英国女王エリザベス2世」の碑文が英国の君主としての女王の崇高な存在感を示し、その戴冠式が女王本人の意志ではなく神意の下に挙行されたものであるということを暗示しています。

裏面

そしてコイン裏面にはイギリス連邦に属する4カ国の国章と共に、それぞれの国家を象徴する花が描かれ、中央に英国王位を示す王冠、さらにコイン下部には戴冠式の年を示す1953の数字が刻まれています。新女王の戴冠式を寿ぐ祝祭感で満たされた当5シリング貨は、その後半世紀以上にわたって英国民を導き、齢を重ねて存在感を増す英国女王の若き日の栄光の軌跡を永遠に刻むアニバーサリーコインの極致です。