2024 チャールズ3世 ブリタニア 10ポンド5オンスプルーフ銀貨 未鑑定 箱付き【ご予約承り品】

擬人化された英国を象徴する永遠の女神ブリタニアの肖像

現在のイギリス連合王国の中心を成すグレート・ブリテン島は、古代ローマの植民地となった時に征服者であるローマ人たちによって「ブリタニア」と名付けられました。この島とローマの関係は、カエサルがガリア地方のケルト人を支援していたブリトン人を討伐するために島の南部に侵攻した紀元前1世紀頃にさかのぼります。ローマはカラクタスを始めとする島の先住民族であった諸部族の抵抗に遭いましたが、ドミティアヌス帝時代には島の大部分を領有するに至り、最盛期には現在のスコットランドにあたるカレドニアにまで歩を進めていました。しかし、兵力の削減に伴って後退を余儀なくされ、そこに全長120キロに及ぶ有名なハドリアヌスの防壁を建設し、北方民族の南下を何とか阻止しようと努めました。ローマが支配していた時代には、現在のロンドンにあたるロンディニウムを始めとする各地にローマ風の建造物が造られ、社会全体にわたって急速なローマ化が推進されました。しかし、それは都市部に限定され、その他の地域では依然として農耕と牧畜による自給自足の生活が営まれていました。この実状は、ローマの支配がケルト人社会を根底から変革するものではなかったことを物語っており、ブリトン人による部族国家は独立を保ちつつローマの影響下にあったということになります。しかし、紀元5世紀ごろからローマ帝国の衰退が顕著となり、皇帝ホノリウスの命によってローマ軍が撤退した後、ローマの影響による文化的痕跡は徐々に姿を消し、北方のアングロサクソン人が支配する時代を迎えます。ローマによる入植までは「アルビオン」の古名を有していたブリタニアでしたが、ブリトン人の国家を意味する「ブリタニア」の名を与えられてからは文化的にも飛躍の時を迎えます。ローマ帝国支配下のブリタニアでは古代ローマの貨幣が流通していましたが、その表面に描かれていたのが島と同じ名を与えられた女神ブリタニアの肖像でした。現在のイギリス連合王国の国家的シンボルとして温存されているこの女神は、擬人化された英国そのものとして、過去約2000年間にわたって崇められてきました。海を象徴する三つ又の槍トライデントとユニオンジャックの盾を携え、コリント式の兜を被ったブリタニアの颯爽たる姿は、英国の永遠の理想像として、時を超えて国家の威厳を表出しています。

英国の限りない尊厳を表現する印象的な肖像を描く2024年度版ブリタニアコイン

誇り高き女神ブリタニアの肖像ほどに英国の尊厳を象徴するものは他にありません。1987年にロイヤルミントが発表した地金型金貨のブリタニアシリーズは、英国コインらしい秀逸なデザイン性と保証された金属の純度によって驚異的な成功を収めました。その後、1997年には地金型銀貨が発表され、こちらも豊富なラインアップによって国際的な注目を集めました。毎年同じくブリタニアの立像が描かれている地金型コインとは別に、2013年からはプルーフ仕様の特別版が発表されており、毎年異なるデザインのリリースによって例年世界中のコインファンを興奮させています。プルーフ版ブリタニアコインの2024年度版は、かつてないほどに斬新な意匠によって、ブリタニアの魅力をより前面に押し出しました。コイン裏面にはブリタニアを暗示するトライデントもユニオンジャックの盾も見当たりませんが、頭部にはコリント式のヘルメットが描かれているためブリタニアの横顔であることは間違いありません。全身像、もしくは半身像が主流であった過去のブリタニアコレクションでしたが、今回の作品は頭部のみを描く大変珍しいデザインであり、同コレクションの新たな方向性を明確に示唆するものとして注目に値します。また遠景として裏面に挿入されている波は、日本の江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の大作「富嶽三十六景」の中の名作「神奈川沖浪裏」の描写を想起させる大変興味深いものであり、われわれ日本人にとってはどこか馴染み深いものでもあります。またブリタニアの頭上には三日月が見られ、ここまで情緒豊かな演出は同コインシリーズ始まって以来のことと思われます。コインの表面を飾るのは、2022年9月の代替わりに際して即位したチャールズ3世の治世初のコイン肖像です。そこに描写されているのは、王冠のない素顔のままの国王の真摯な横顔です。過去約70年間にわたって英国王大子として活躍したチャールズ3世の現在を表す名コイン・ポートの満を持しての誕生です。コイン表裏に描かれたチャールズ3世とブリタニアの肖像。そのどちらもが偶然かもしれませんが左向きであり、英国の輝ける未来と信じるという同じ方向性を共有しているように思えてなりません。改めて当2024年度版ブリタニア・コインの解禁を嬉しく思う次第であります。