1953 エリザベス2世 ヤングヤング 1・2・3・4ペンス 特別版モーンディ金貨4枚セット PCGS PR62-63+CA WR-456【R7】

新国王チャールズ3世の戴冠式開催に際して改めて振り返るエリザベス2世70年間の治世

2023年5月6日、ロンドン・ウェストミンスター寺院にて、待望のチャールズ3世のための戴冠式が執り行われました。昨年9月8日の前国王エリザベス2世の崩御から約8か月間に及んだ服喪期間を経て、遂に英国を始め全世界が新国王戴冠の世紀の瞬間を70年振りに見届けることとなりました。

不死鳥のような時代

そして式の偉容と同時に、前回1953年6月2日のエリザベス2世のための戴冠式が再びマスメディア等において大々的に取り挙げられ、その後、女王が全生涯を賭けて成就した大業全体が改めて称賛の的となりました。

70年前のその日もまた、この度の戴冠式当日と同じく小雨が降り続いていたそうでしたが、式が終わる頃には晴れ上がり、清々しい6月のイングランドならではの天空の下に、人々は若き日の女王の美しい姿に眺め入ったことでしょう。その後、女王は夫のエディンバラ公爵ことフィリップ王子と共に正に全世界を公務によって駆け巡り、英国の顔として大活躍されたことは周知の事実です。

しかし、この間に女王はどれ程までの困難を乗り越えなければならなかったことでしょうか。1992年にはウィンザー城の大半を焼き尽くした火事が起こり、女王はこの年を 「アンヌス・ホリビリス＝最悪な一年」と端的に表現され、話題を呼びました。また1996年にはチャールズ王太子とダイアナ元妃の離婚があり、その翌年1997年8月にはあの痛ましいパリでの元妃の事故死によって、英国王室の権威が失墜しかねない事態を招きました。また2020年代には孫のヘンリー王子の王室からの離脱や、70年以上にわたって連れ添った最愛の夫フィリップ殿下との永遠の別れをも経験されました。96年間にわたったその生涯は実は満身創痍そのものであり、決して美化できる類の物では無かったかもしれません。

しかしその生涯は歴史的に見れば栄光に満ちたものとして解釈され、その70年間の治世下において英国は未曾有の発展を遂げたことは疑いようのない事実です。「女王の時代に英国は繁栄する」と昔からよく言われていますが、エリザベス2世在世時の英国は繁栄を謳歌したのみならず、未だ世界の中心に位置する老大国としての英国の歴史的な立ち位置を改めて明確に指し示した点において、かけがえのないものであったことだけは断言できるはずです。

エリザベス2世の治世の象徴として継承された世界唯一のモーンディー・マネー・金貨バージョンの驚異的セット

エリザベス2世の戴冠式の年、1953年に発行された、恐らくは世界唯一の例として奇跡的に現代に継承された最高度の希少価値を誇る名品のご紹介です。

王室洗足式は、聖金曜日の前日、聖木曜日に行われるイングランド国教会の宗教的儀式として知られています。当日会場にて国王自らが参列者に「モーンディー・マネー＝王室下賜金」と称する貨幣を高齢者を始めとする参列者に配布するという象徴的な習慣を継承していることがこの儀式の最大の特徴です。銀貨が主流のモーンディー・マネーは技術的には法定通貨として認められていますが、純銀の含有量と貨幣価値のため、通常は流通していません。

今回ご紹介させていただく作品は、それら一般的なモーンディー・マネーとは一線を画す例外的な金貨バージョンの、それも大変稀少価値の高い4点セットとなります。1ペンスから4ペンスまでの各種サイズ・額面を持つこの歴史的な逸品は、少なくとも1985年まではその存在すら知られていなかったものです。金貨バージョンであることを鑑みますと、恐らくは若き君主エリザベス2世のために特別に制作されたものであった可能性がありますが、女王が保有するウィンザー城のコレクションには残念ながら加えられることはありませんでした。

20世紀英国コイン・コレクションの白眉

その後、20世紀最大の英国コインコレクターの一人として著名なノーウェブ夫妻の収蔵品となり、20世紀英国コイン・コレクションの白眉として称賛を集めました。その後、1985年から1987年にかけて全4回にわたって開催された「ノーウェブ・コレクション」オークションにて出品され、当時のカタログにも唯一無二の逸品として紹介されています。

4点とも同じデザインのものですが、まず表面には若き日のエリザベス2世を描くコインポートレートの大作「エリザベス2世の第1肖像」が掲げられています。「ヤング・ヤング・エリザベス」の通称によってより広く知られているこの鮮烈な作品は、1950年代の英国コイン界を牽引し、熟練の技を誇った女流コインデザイナー、メアリー・ギリックの傑作として、女王の治世の始まりと共にリリースされ高い評価を獲得した作品です。

表面には25歳当時の流麗な美しさを誇るエリザベス2世の右向きのポートレートが掲げられており、その周囲には「神の恩寵による大英帝国女王エリザベス・忠誠の守護者」と読むことのできる厳かなラテン語碑文が綿々と連なっています。極め付きは女王の頭上を飾る月桂冠であり、これは古代ギリシャ時代以降、勝利者、もしくは最高権力者の象徴として代々受け継がれてきたものです。元来男性君主の象徴である月桂冠を女性の君主であるエリザベス2世が身に着けている点は、この作品最大の見どころです。

裏面にはコインの額面と共に祝祭感溢れる植物のリースと英国王室の永遠の象徴とされる聖エドワード王冠が描かれており、時の経つのも忘れさせるほどにうっとりと眺め入ってしまうものです。当貨の両面のデザインはその後70年間変更されることなく継承されていたものですが、1953年、つまりエリザベス2世の戴冠式の年に発行された当コインセットは、その最初期の例として必見に値します。

過去のオークションにおいても4点セットとして、それも金貨バージョンのモーンディー・マネー・セットの出品例は記録が残っておらず、史上唯一の例として21世紀に継承されたこと自体が奇跡的であると申せます。稀代の名君エリザベス2世の治世最初期の記念品として、熱心なコレクターの第一級のコレクションに一層の品格をもたらすことでしょう。

品番	2968
鑑定番号	80150559 現在のPCGS鑑定数はここをクリック下さい
グレード数	PR63・PR62・PR63+CAM・PR62
発行限定数	推定1セット
表面	エリザベス2世 ヤングヤング
裏側	額面
発送元	日本国内から発送