ガーンジー 2006 エリザベス2世 女王誕生80周年記念 5ポンド金貨 PCGS PR69DC

1926年4月21日にお生まれになった現英国女王エリザベス2世。その激動の人生は英国の女王となる運命を担ってロンドンのメイフェアの一角で産声を上げた瞬間に始まりました。1936年の叔父エドワード8世の突然の退位によって父アルバートがジョージ6世として即位し、自身も王位継承者としての未来を嘱望されるようになりますが、その時エリザベスは僅か10歳でした。しかしこの逆境にもかかわらず、若きエリザベスは運命を受け入れる決意を固めます。祖母のメアリー王妃譲りの強靭で実直な性格のエリザベスでしたが、遠い親戚であったギリシャとデンマークの王子フィリップに対してだけは可憐な乙女でした。そしてその後の人生を共にすることになる意中の人と華燭の典を挙げ、恋愛を成就します。エリザベスのフィリップに対する恋慕の情を影で見守っていたのは他ならぬ父王ジョージ6世自身でした。その婚礼に際し、ジョージ6世は心優しき父として最愛の娘エリザベスに一通の手紙をしたためています。そこには若くして家族の仕事を支えてくれるようになり、誰に対しても分け隔てなく気品のある態度で接する娘に対する父親の喜びと感謝の気持ちが切々と語られていました。国王ジョージ6世ご自慢の娘エリザベスはその後、父の遺志を受け継ぎ英国の女王となり、国民との約束を見事に果たします。そしてこのコインが発行される2006年、傘寿を迎えた女王は相変わらず英国の女王としての責務を十二分に果たされていました。父の娘に対する変わらぬ愛情、また君主と国家の絶対的信頼関係を背景として到達した何物にも代えがたく貴き80周年を刻む当金貨は、全人類に捧げられるべき究極のメモラビリアです。

ガーンジーの名で知られるガーンジー代官管轄区は、イギリス海峡のチャンネル諸島に位置する英国王室属領として知られています。現英国君主エリザベス2世をその君主としているものの連合王国には属さないため、英国の海外領土や植民地とは異なり独自の自治権を有しています。英国本国との歴史的な関係は1066年にノルマンディー公ギヨームがイングランドを征服し、イングランド王ウィリアム1世（ウィリアム征服王）として戴冠した時に始まります。それ以来、ガーンジーは歴代英国王の直轄地となり、現在はエリザベス2世が島の最高権威であるノルマンディー公の称号を保持し、元首としての役割を果たしています。島の主要な産業としては観光業と酪農が挙げられますが、世界中のコインファンを魅了する美しい記念コインの発行は島の重要な財源を捻出するのみならず、島の対外的政策として一役買っているのも事実です。そしてそれは本国英国との歴史的な繋がりを示す重要な事業として、ヨーロッパにおける島の歴史的優位の確立に繋がっています。2006年にはエリザベス2世の誕生80周年の祝賀が本国英国を始めとするイギリス連合王国各国において繰り広げられました。王室属領であるガーンジーもまたこの記念の年に、島のお家芸とも言える記念コインの発行によって女王の長寿を華々しく祝しました。

2006年にガーンジーが発行した当５ポンド金貨は、英国女王エリザベス2世の傘寿を記念して同年にリリースされました。女王の誕生80周年記念に相応しい豪華絢爛たる偉容を誇るこのモダンコインの秀作は、ガーンジー島ならではのオリジナリティー溢れるデザインによって発行当時、コインファンの絶大なる人気を獲得した作品です。その人気は主にコイン裏面のデザインを源としているようです。そこには女王にとって即位後初の公式コインポートレートとなった記念すべき「第1肖像」が刻まれており、80年の歳月の重みを感じさせます。通称「ヤングヤング」と呼ばれるこの傑作肖像は女王が即位した当時、ロイヤルミントの代表的なコインデザイナーであったメアリー・ギリックの代表作として世に知られているものです。その頭上には王冠を戴く代わりに古代ローマ時代に勝利者の象徴とされていた月桂冠が見られ、女王の豊かな頭髪に彩を与えています。あらゆる角度から若き女王の聡明さや強靭な性格、そして何よりも気品を余すところなく表現するこの肖像ほど、発行後に伝説化したコインポートレートは他に見当たりません。この若き日の栄光の追憶と対を成すのは、表面に刻まれた熟年期に差し掛かった英国女王の貫録を余すところなく伝える有名な「第4肖像」です。英国を代表するコインデザイナーにして世界的な彫刻家でもあるイアン・ランク・ブロードリーの大作であるこの感動的な肖像は、過去に発表された他の4種の公式コイン肖像とは一線を画するものです。写実性こそはこの名作が主眼とするところで、齢80を重ねた当時の女王の風格と威厳をきめ細やかな筆致によって浮かび上がらせています。頭部にはメディア等で目にする機会の多い女王自身のお気に入りの宝飾品でもある「大英帝国とアイルランドの少女たちのティアラ」という夢のような呼称を持つ名品です。遥か昔ヴィクトリア期に女王の祖母メアリー王妃が結婚祝いとして王室から贈られれたとされる大変由緒ある宝飾品として知られています。1953年に挙行された世紀の戴冠式を目前に控えたエリザベス女王はこの輝かしいティアラを王妃から受け継ぎますが、その後半世紀以上もの歳月を経て現在も愛用され、英国王室の古き良き伝統と格式の象徴として公務に欠かせない装身具となっています。コイン表裏に女王の過去と現在を刻む当コインは、眩いばかりの黄金の煌めきを伴ってエリザベス2世の至高の誕生80周年を恒久化する役目を担っています。