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グレートエングレーバーシリーズの『流通市場における相場推移とスリーグレーセスの将来的展望』

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皆さまこんにちは、イギリスコイン専門店コインパレスの室田でございます。
いつもコインパレスBLOGをご覧頂き、誠にありがとうございます。

THE GREAT ENGRAVERS Series -偉大なる彫刻家シリーズ-
第一弾の「ウナとライオン」がリリースされてから早くも一年以上が経過しました。
そして第二弾「スリーグレーセス」が先日リリースされ、ウナ&ライオンリリース時の盛り上がりを上回る様相で日々話題が絶えません。
皆さまに置かれましては連日、ご予約・ご注文のお問い合わせを多く頂戴し、深く感謝申し上げます。

本日は、ロイヤルミントによる「偉大なる彫刻家シリーズ」第1弾「ウナとライオン」のリリース後の流通市場における相場推移と第2弾「スリーグレーセス」の将来的展望についてお話させて頂きます。

ウナとライオン「流通市場における相場推移」

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2019年11月、コイン業界を騒然とさせた英国ロイヤルミントによる「The Great Engravers Series=偉大なる彫刻家シリーズ」第1弾待望のリリース時の興奮が蘇ってきます。

英国貨幣史を代表するコイン彫刻家とその代表作を世に紹介する目的で考案されたこのシリーズは、過去と現代が織りなす貨幣製造の粋を極めたリマスター版の制作を主眼とするロイヤルミント畢生の大事業として今日広く認識されています。

その第1弾として選定されたのがヴィクトリア朝時代の名品、天才彫刻家ウィリアム・ワイオンの代表作「ウナとライオン」でした。

この貨幣史上最高の傑作はその優れたデザインもさることながら、希少価値においても抜きん出たコインとして歴史上に永遠に刻印されています。

1839年、即位して間もない若き君主ヴィクトリア女王の即位3周年と戴冠1周年を記念して発行されて以来、30年以上にわたって追加発行され続けていた当金貨は、およそ400枚が発行されていたとはいえ現存する数は極めて少なく、市場に出回る機会も殆どないほどの珍品として知られています。

そんなオリジナル「ウナとライオン」発表の約180年後の2019年、同デザイン初のリマスター版としての再現は当然世間の注目を集めました。

発表から1年以上経ち当リマスター版は貨幣学上に不動の価値を築き上げています。

同リマスター版の過去一年間の市場での価格推移を振り返りますと、いかにこの作品が芸術品として特別視され、モダン・コインでありながらもそのデザイン性ゆえに世界のコイン業界にて珍重され続けて来たかを伺い知ることが出来ます。

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「ウナとライオン」リマスター版2オンス銀貨を例に挙げて見てみますと、発行翌年、つまり2020年1月以降の価格推移は同年8月頃に急激な価格上昇が起こり、鑑定機関による個々のコインのグレードにもよりますが、ファーストリリースなどの特殊な鑑定結果を持つ希少品を中心に、100万円から150万円にまで相場の上昇を記録しています。

そして年末から年明けにかけてはそこからさらに100万円ほどの上昇があり、最高鑑定の商品は現在200万円以上で取引されている状況です。

マテリアルとしての違いはありますが、リマスター版5オンス金貨となりますと同年2月以降、価格は上昇する一方で、1300万から1500万円台での推移が年間を通じて続き、年末には遂に2000万円代に到達します。

いかに歴史的なデザインを誇り空前の人気を誇る優れた作品であるとはいえモダンコインの価格がこれ程まで上昇した例はかつてなく、このリマスター版ならではの特筆すべき結果であると断言できます。

これらのデータの背後に見えてくるのは過去の英国貨幣自体の世界的な価格上昇の傾向です。これは何も「ウナとライオン」リマスター版が発行された2019年に始まったことではなく、2010年代以降のコイン業界特有の現象として注目すべきことです。

2008年に全世界の経済を揺るがせた未曾有の経済危機「リーマン・ショック」こそ、世界的コイン相場上昇の鍵を握っていると考えられます。

では、なぜこの様な世界規模での経済危機の後に投資対象としてのコインが俄かに注目を浴びることになり、それが価格上昇に結び付いたのでしょうか。

その第1の理由として考えられるのはコイン流通市場の特異な性質です。

コインでの投資は一般的に長期的な展望が求められており、決して短期的な結果を求めるものではないはずです。
このため流動性の低さなどのコイン売買特有の欠点が外部からの大規模な投機を退ける結果となり、小規模な市場に限定されることになったと言えます。
その規模ゆえに大々的に注目されるには至らず、その後2010年代に入って世界的な注目を集めたとはいえ、未だ投機手段の主流とはなり得ていないのが実状です。

しかしこれは逆に英国貨幣のようなさらに小規模で、なおかつ専門的な知識を要する分野に多大なる恩恵をもたらすことになります。
認知度の低さゆえに専門性の高さが求められる「狭き門」の中身はマニアの領域であると認識されている面があり、そのメリットに世界が気付くのにはその後まだまだ時間を要しました。

換言しますと、コインによる投機には真贋を見極める目が必要であり、専門的知識がなければ容易に参入できないと思われている世界であるということになります。

またこの閉鎖性こそが、コインの相場を金融危機から奇跡的に守り続けることができた直接的な理由であり、特にリーマン・ショック以降、英国コインの価値が飛躍的に上昇し市場における安定感を保ち続けることができた主要な要因だったのではないでしょうか。

2010年代以降の英国コインを取り巻く有利な状況は当然コインの相場に影響を与え始め、実物資産としての英国コインの普遍的価値へと繋がって行きます。

また英国コイン、特にアンティークコインの華麗なる歴史的背景、英国王室と個々のデザインとの密接な関連性、さらにはイギリスと過去の大英帝国の国家としての力量と信頼性、これらすべての要素が複雑に織り成され独自の価値を形成するに至ります。

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英国金貨の普遍的価値と世界的相場を知る手段の一つとして、コインの売買で有名なロンドンのスタンリー・ギボンズ社が毎年集計するイギリスコインの価格指数、GB200は高い信頼性を保持しています。

同国で1世紀から20世紀までに発行された希少価値の高いアンティークコイン200銘柄のオークションでの最終落札値から産出し指数化したもので、
ディーラーを始めとするコイン業界関係者の間では信頼のおける情報として広く認知されています。

現在のところ、全世界のレア・コインを網羅した価格指数は存在しませんが、このGB200の存在により元来高い人気を誇るイギリスコインは一層の信用を確保し、安定した価格上昇を保証され続けてきました。

歴史に裏付けられた個々のコインのデザイン性の高さも英国コインの絶大な人気の主要な要素の一つです。

希少価値と共にその個性あふれる王朝時代にまつわるデザインを採用することによって、2019年に世に送られ短期間の間に記録的な価格の上昇を実現したリマスター版「ウナとライオン」ですが、その絶対的評価の源となっているのは天才コイン彫刻家ウィリアム・ワイオンによるインスピレーション豊かなデザインです。

時は大英帝国華やかなりし頃、帝国の女主人である女王ヴィクトリアを妖精の女王ウナに、そして女王の進むべき道を同行する英国民を悠然たる面持ちのライオンに置き換えるという名演出は、英国の長い歴史を礼賛するとともに、このリマスター・コインに歴史的付加価値を与え、さらには英国コイン売買の未来に光を投げかけています。

我々はこの類まれなるリマスター版によって、真の意味で投機の対象としての英国コインの将来性見極めると同時に、英国の国家としての尊厳を強く確信するに至ったと言っても過言ではありません。

スリーグレーセス将来的展望

このような物的価値と精神的価値を同時に保有する2019年版「ウナとライオン」リマスター版の続編として2021年2月22日に沈黙を破って日の目を見たのが、「偉大なる彫刻家シリーズ」第2弾「スリーグレーセス」リマスター版に他なりません。

今回の満を持しての解禁のまず特筆すべき点は、第1弾の価格上昇率の高さを知識として持ち合わせていたコレクターたちが、第2弾の発表を固唾を呑んで待ち望んでいたということです。

また第2弾のデザインとして前回と同じく歴史的な人気を誇る名匠ウィリアム・ワイオンによる初期の大作「スリーグレーセス」が取り挙げられるというニュースが駆け抜けた時、誰しもが今回の入手難易度と価格の高騰を予期していたことが挙げられます。

結果はやはり想像の通りで、インターネットでの商品の販売は数分間で終了したためその予約は困難を極め、購入希望者を精神的に落胆させる事態が続出しました。
ワイオンによって見事なまでにデザイン化された古代ギリシャの三女神の世にも優美な精神世界とは程遠い、乗り越えなくてはならない現実的試練の瞬間でした。
リリース後まだ間もない「スリーグレーセス」ですが、市場の価格推移をよく見ますと第1弾発売の直後と比較して一段と弾みがついているのが見て取れます。

最も入手し易い価格で販売された2オンス銀貨でさえも50万円からのスタートを切り、同じ重量の金貨は現在700万円台で推移しているところです。

5オンス金貨になりますと、1000万円からのスタートとなり、大型金貨3種、つまり1キロ、2キロ、3キロは発売から数日も経たないうちに4500万円代の高値で取引されていることが明らかとなりました。

この前代未聞の高額な価格設定の理由は種々考えられますが、1817年に発行され、現存するオリジナルの殆どが銀貨であったため、この度の金貨としてのリマスターが特に珍重されることに繋がったのではないかと思われます。

世界に一枚しかないはずの幻の5キロ金貨を除く5種類のリマスター版金貨は、世界に3枚しか存在しない博物館級のオリジナル金貨に対する熱心なコレクターたち垂涎の夢の埋め合わせとして、名実ともに英国貨幣屈指の女王として君臨し、今後一層の価格上昇を実現し経済的勝利を収めるに至ることは時間の問題ではないかと思われます。