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【特集】世界アンティークコイン大事典 「基本コンセプトとその利便性」【第2部】

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前回は世界アンティークコイン大事典の魅力を地理的範囲と言語的特色の観点からご紹介させていただきました。
第2部は「基本コンセプトとその利便性」について書かせて頂きます。

世界アンティークコイン大事典の基本コンセプトとその利便性

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我が国におけるアンティークコイン研究者の草分けとも呼べる平木啓一氏による「世界アンティークコイン大事典」が遂に日の目を見ることになりました。
45年前に発表された「世界貨幣大事典」、そして10年前の「新・世界貨幣大事典」の改訂版として今回世に送られるのが、
氏の研究の集大成と呼んでも過言ではないこの「世界アンティークコイン大事典」に他なりません。
過去の二冊において採録されていた紙幣に関する用語と項目はこの度の改訂版には含まれず、
一貫して古代ギリシャ・ローマ時代のコインを中心に西欧諸国とアジアの貨幣に焦点を当てている点が最大の特色です。

古代ギリシャ・ローマ、神聖ローマ帝国を始めとするアンティークコイン制作の拠点となった世界の国々の英語と日本語の二か国語表記での詳細にわたる地図を付録し、アンティークコインのための大事典としての普遍的価値を確立しました。
また400種以上の原寸大コインの美しい写真の掲載を特色とする当事典ですが、前回とは対照的なカラー写真で復活させ、
特に銀貨や銅貨のグラデーションは、その筆舌に尽くしがたい美しさを見事に捉えています。

歴史や社会的背景に基づいて定義された個々の用語と項目の文章は豊富な情報を提供しながらも厳選された語彙を元に端的に表現されており、
これは著者である平木氏の人柄と、学術的教養の高さを証明するものとして注目に値します。
また本書は、それらの国々の歴史をアンティークコインを通じて紹介する読み物としても非常に興味深く、専門家のみならず、学生を初め一人でも多くの社会人にお薦めしたい名著でもあります。

偉大なる文明を誇る国々の文化遺産としてのアンティークコインの普遍性は多大で、当大事典の一つ一つの項目の中にその長大なる文化的変遷の片鱗を伺い知ることが出来ます。
日本人の読者にとって非常に心強いことの一つとして、巻末の索引がアルファベット順ではなく50音順によって書かれていることが挙げられます。
これによりその横に付随する原語表記との比較がより一層容易となり、原語の正確な綴りの理解と、カタカナ表記されたその発音を同時に会得することが出来ます。

学術的資料として、また説明が付随する芸術性の高い図鑑として多面的な用途を示唆する本書は、真にアンティークコインを理解し愛するための必読書として、またアンティークコイン業界屈指の座右の書として、今後数世紀に渡って受け継がれてゆくべき不朽の生命を吹き込まれた大作に違いありません。