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英国王室のフィリップ王配殿下・エディンバラ公爵のご薨去に対する追悼文

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英国王室のフィリップ王配殿下・エディンバラ公爵のご薨去に対する追悼文

株式会社コインパレスは、2021年4月9日の英国王室のフィリップ王配殿下・エディンバラ公爵のご薨去に対して、エリザベス女王陛下、チャールズ皇太子殿下並びに他の王室メンバーと王室職員の方々、そしてイギリス連合王国内の全ての人民に対し、謹んで深い哀悼の意を捧げます。

We express our deepest condolences to Her Majesty the Queen, His Royal Highness the Prince of Wales, Members of the Royal Family and their Households, and the people of the United Kingdom on the passing of His Royal Highness the Duke of Edinburgh on 9 April 2021.

英国コインの販売に特化するコインパレスは、これまでにもフィリップ王配殿下関連のコインを多数取り扱ってきた実績があります。この度の殿下のご薨去に際しまして、殿下のご生前のご功績を偲び、英国モダンコイン上に刻まれた殿下の王室と国家に対する忠誠と献身を通して追想させて頂きたいと思いました。

エリザベス二世との世紀の大婚、そして女王の即位と一生涯にわたる献身の日々

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1921年にギリシャ王家の王子として誕生したフィリップ王子は、母方の血筋により英国女王ヴィクトリアの曾孫でもあります。政情不安定な母国ギリシャを去り、イギリスに帰化し、1939年にはイギリス海軍兵学校を首席で卒業。士官候補生としてイギリス海軍に入隊し第二次世界大戦に従軍します。

連合国側の戦勝によって幕を閉じた世紀の大戦のあとしばらくの間、普段の生活に戻るための休息期間があったことを王子は後に回想しています。そしてそのゆっくりとした貴重な時間の果てに、10代のころからお互い顔見知りで遠戚関係にあった英国王室のエリザベス王女と世紀の恋に落ちます。この恋の始まりはエリザベス王女の一目惚れからであったことはよく知られていますが、類まれなる美男子であるフィリップの圧倒的存在感は当時から周囲の注目を集めていました。

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二人は文通によって愛を確かめ合い、1947年には待望の華燭の典を挙げるに至ります。しかし1952年の英国王ジョージ六世の突然の崩御はエリザベス王女の、そしてフィリップ王子の運命を大きく左右することになります。その時、若い夫妻は公務のため遠く離れたアフリカに滞在中でした。父王が亡くなった瞬間、エリザベス王女は英国女王エリザベス二世となり、夫フィリップ王子はその臣下として女王に永遠の忠誠を誓います。その後二人は3男1女に恵まれ、英国人の理想とも言える大家族制を英国王室に復活させます。

そしてフィリップ王子は英国君主の夫、エディンバラ公爵として世界各国を女王と共に歴訪し、2017年の公務からの引退までに行った単独での公務の回数は2万2000回以上、スピーチは5000回以上に上ると伝えられています。その他環境問題改善と教育に対する積極的な発言と取り組みは特に有名で、公の生涯をかけての功績として世界的に評価されています。

2021年2月に持病の心臓病と感染症の治療のために入院していた公は、3月16日に自らの希望で急遽退院し、女王が帰りを待ち詫びるウィンザー城へ帰りを急ぎます。それは73年間連れ添った自身の妻にして英国女王である最愛の人と人生最期の数週間を一緒に過ごすためでした。最後まで毅然とした態度をとり、決して人に弱みを見せない、そして何よりも周囲への配慮を決して忘れないフィリップ殿下の力強くも温かい真心を伝えるエピソードではないでしょうか。

フィリップ殿下生誕90周年記念コインに見られるその温かいお人柄

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フィリップ殿下を取り挙げたコインは数あるコインの中で特に印象深いものを2点ご紹介させて頂きます。まず2011年に殿下の生誕90周年の記念に発行された、通称「ラージフェイス」と呼ばれている金貨を取り挙げます。裏面一面に引き伸ばされた殿下の右向きの横顔が情感豊かに描かれ、生前の殿下のお人柄が偲ばれます。その横顔は、陰影に富んだ写実性溢れる描写が殿下の実在を伝えており、コイン上に描かれた肖像画の最も優れた例の一つと見なされています。

表面のエリザベス女王の右向きの第4肖像は言わずと知れた傑作ですが、同じ方向性を模索し続けたご夫妻の60年以上にわたる信頼関係を物語っているように思われます。英国女王の最大の理解者であった殿下の女王に対する深い愛情と節度のある敬意を同時に感じさせるポートレートでもあります。

プラチナ婚記念コインに表現されるフィリップ殿下の女王に対する真実の愛

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2枚目のコインは2017年11月20日に結婚生活70周年を迎えられたエリザベス女王とフィリップ殿下を祝福し、お二人の姿がコイン両面に描かれた記念貨です。ご夫妻はプラチナ婚を迎える英国王室最初のカップルとなり、この金貨はその想像力豊かなデザインと美しさによって発行時大いに注目されました。表面のお二人の肖像はエティエン・ミルナーによる力作で、老いてなお同じ方向を確認し合う美しき老夫婦の姿がしっかりと刻まれています。

女王に寄り添うフィリップ殿下の頼もしくも心優しき風貌が万人の感興をそそります。裏面にはジョン・バーグダールによるご夫妻の仲睦まじい乗馬姿が描かれ、「夫婦愛が二人を幸福のもとに一つにした」という意味の感動のメッセージが添えられています。第二次世界大戦後の暗い緊縮の時代、若いエリザベス王女とハンサムなフィリップ王子の婚礼は英国社会にとって久々の光明でした。結婚式の直後、フィリップ殿下は女王の公務を支援するために海軍での経歴を放棄する決心を固めます。王女であった女王と共に描かれている馬上の颯爽たるフィリップ殿下の若き日の面影を伝える当金貨は、飾り気のない一人の人間としての殿下の魅力を余すところなく伝えています。

フィリップ殿下再来日時の日本国民に向けて発信された真摯なメッセージ

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1975年にはエリザベス二世の公式訪問の際に同行され、初来日を果たされたフィリップ殿下。実はその後も環境問題に関するご公務のため何度か来日されていました。中でも1984年の来日時には、日本の人気長寿番組「徹子の部屋」に特別出演を果たされ、環境問題について持論を展開されるのみならず、その当時の日本が抱えていた新たな環境問題について警鐘を鳴らされ、番組終了後、カメラがオフになった後も議論は果てしなく続いていたとのことです。殿下の国際的な価値観に基づくメッセージは我が国日本のテレビ視聴者に強い影響を与えたことは言うまでもありません。 強靭な意志と、それとは反対の心優しき柔軟性を同時に兼ね備えたフィリップ殿下の存在は、我が国日本においても決して忘れられることはないでしょう。そんな生前の殿下のご見識と気高い魂に衷心からの感謝を捧げたいと思います。