英国女王エリザベス二世・至高の生誕95周年を祝して
イギリス連合王国の女王エリザベス二世は、2021年4月21日午前2時40分(グリニッチ標準時)に95歳の誕生日を迎えられました。英国民は元より、全世界の人々がこの空前の瞬間を切望していたことと思われ、感動を共有することと思われます。
コロナ禍のため大規模な祝賀行事の予定は無く、女王としての公式誕生日である6月2日をより重要と見なす傾向があるため、実際の誕生日はなぜかひっそりと静まり返っている感があるのも事実です。
また4月9日の夫フィリップ殿下の薨去に対する公式な服喪期間は終わったとはいえ、英国全体が未だ悲しみに包まれている中、唐突に迎えた女王の95周年ということもあります。
フィリップ殿下の薨去はおそらく女王自らにとって人生最大の弔事であり、95歳を目前に控えて経験した試練の時であると誰しもが思っていたことでしょう。その答えは依然謎に包まれているものの、全世界が注視していたフィリップ殿下の葬儀に参列する喪服姿の女王の姿を思い返す時、いかにこの95周年が尋常ならざる偉業であるかを改めて痛感させられました。
葬儀の会場であるウィンザー城・聖ジョージ礼拝堂前に到着した王室専用ベントレーから静かに降り立ったその高貴な人物こそ殿下の妻であり英国君主であるエリザベス女王でした。
コロナ禍による公務削減のためメディアでお見掛けする機会がめっきり減った中、我々の前に姿を現した生ける伝説である女王は老いてなお麗しく、着用する黒いマスクの向こう側には鋭い眼光がにらみを利かせ、英国女王の強靭な意志の力を感じさせ背筋の伸びる思いがしたものです。
御年95歳を迎えられる「馬上の英国女王」の凄みを改めて思い知らされた瞬間でした。一国の君主として、また一人の妻として全世界を前に毅然とした態度を示され、老齢に達した英国女王にしてのみ可能な孤高の境地を我々に惜しげもなく見せて下さいました。
1947年の世紀の大婚以降、常に公私共にフィリップ殿下と共に人生を歩まれてきたエリザベス女王。実は私も過去に一度だけ幸せに包まれたお二人の姿を新緑の季節のイングランドでお見かけしたことがあります。
場所はアスコット競馬場で、2011年6月に開催された英国王室主催の競馬イベント「ロイヤル・アスコット」の記念すべき300周年の最終日(6月18日)でのことでした。
開催期間中ウィンザー城に滞在されている女王を含む英国王室の方々は、競馬場に延々と続く道「ロング・ウォーク」を通って午後2時に会場に到着されます。定刻になり女王の馬車が予定通り到着した旨のアナウンスが流れると、帽子の花で百花繚乱の場内は騒然となり、遂に我々の前に英国女王はその全貌を現します。
次の瞬間、カメラのフラッシュの洪水が巻き起こり、眩しさに目も開けていられないほどになります。夫フィリップ殿下の横には英国女王エリザベス二世の満面の笑みを湛えた世にも晴れやかな姿がありました。
ライトブルーの帽子とアフターヌーン・ドレスをコーディネートしたその日の女王は、初夏のイングランドに咲き誇る一輪の薔薇の趣で、最愛の夫、フィリップ殿下と共に、その姿はアスコットの晴天の美しさと見事に溶け合っていました。
その後の競馬での私の結果は言わぬが仏ではありますが、フィリップ殿下のご生前にアスコット競馬場において女王陛下の喜びに満ち溢れたお顔を拝することが出来たことは何にも代えがたい体験です。
その時からはや10年が経ちました。今後陛下はフィリップ殿下の薨去を乗り越えられ、更なる高みに到達されることでしょう。
英国国歌「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」の歌詞と同じように、どうか気高き女王をお守りくださいと願い、女王が君臨する英国の未来永劫の繁栄を念じつつ、この前人未到の95周年に対し心からの祝意を表したいと思います。