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【収集の手引き】 第6章―美術品・金投資(4)

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他の投資と比べることで、そのすごさが見えてきます。

「コイン投資 VS 美術品投資」

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絵画や陶器、掛け軸、刀剣といった美術品も昔から根強い現物資産です。バブルの頃には、ゴッホやルノアール、ピカソなど教科書に載っているような有名作家の絵画がたくさん日本に集まってきていました。逆に今は草間彌生さんや、村上隆さんといった日本人アーティストの作品が海外でも高い評価をうけつつあります。
ところでバブルの頃に日本人が買いあさった絵画は、どうなったのでしょうか。実は、バブル崩壊後、静かに海外へと買い戻されていったようです。しかも、大半の絵画は、購入時の半額以下の価格だったとか。これがバブルの夢の悲しい現実です。

<美術品投資のメリット>

  1. 当たれば大きい
    十数年前に十万円~二十万円だった奈良美智さんや村上隆さんの作品が今や一千万円を超える値段がついているというのですから、当たると大きいのが美術品投資の醍醐味と言えるでしょう。

  2. 美術品そのものを楽しめる
    壁に絵画を飾ったり、廊下に陶器を置いたりして、生活空間を彩って楽しめるのは、美術品投資ならではの楽しみです。もしも、先行投資して買った作家が日の目を見ることがなく投資としては失敗だったとしても、気に入って買った作品であれば、手元にあるだけで満足できるとも言えます。

<美術品投資のデメリット>

  1. 保管が難しい
    絵画なら保管する上で、18~20度かつ湿度50~60%の環境を保つ必要があります。カビは厳禁、また紫外線で劣化してしまうので、日の光が入る環境を避けるなど、保管には配慮が必要です。
    貸し金庫を借りるにしても何十号もある絵画等、大きな美術品の場合は、預け入れることが困難です。セレブならば、絵画に適した湿度・温度管理ができるよう自宅を美術館やギャラリーのように改装するという手もありますが、一般人にはなかなか厳しい条件です。
    刀剣の場合も、保管に手間がかかります。刀の場合は酸化してさびてしまうことがあるので、それを防ぐために半年に一度の頻度で油をひく必要があります。また研ぎを行う場合は、専門の研ぎ師に依頼する必要があり、それなりの費用が発生します。
    ロレックスなどのアンティーク時計の場合も同様に約3年ごとにオーバーホールの必要があります。機械の性能を維持するために必要な作業なのです。

  2. 地震など災害の心配
    陶器や彫刻など、地震の被害によって破損の恐れがある物は、地震の多い日本では保管が難しいという面があります。実際に、東日本大震災の折には、これまで集めた陶器コレクションの大半を失ってしまったというお客様がいらっしゃいました。絵画や掛け軸の場合は、火災も気をつけねばなりません。最近は、台風や水害も増えてきており、こうしたリスクから作品を守らなければならないのは、なかなか大変なことです。

  3. 美術品を見抜く目が必要
    当たれば大きいのが、美術品投資ですが、星の数ほどいるアーティストの中から将来、人気がでそうなアーティストを選ぶのは至難の業と言えるでしょう。
    また掛け軸などは、贋作が山ほどあると言われており、精巧なものはプロでも見極めが難しいほどと言われています。

  4. 値上がりに時間がかかる
    あまり良くない物の例えですが、芸術家が亡くなると作品の値段が跳ね上がるという話しを聞かれたことはないでしょうか。希少価値が上がるからなのだと思いますが、美術品投資の場合はそのくらいの長いスパンで考える必要があるということなのでしょう。もちろん、買った作家の作品が値上がりするかどうかは、運次第というところもあります。

<コイン投資との比較では?>
アンティークコイン投資もコインの美しさそのものを楽しめる現物資産であり、美術品投資とは近い関係にあると言えます。しかし、コインに比べると圧倒的に美術品のほうが数も種類も多く、その中から値上がりするであろう逸品を選ぶことは、まさに砂浜から一粒の金を探すようなもの。美術品を見る目を養う必要もあり、本当に好きな人だけが楽しむ投資という位置づけでしょう。
アンティークコインにも、いろいろな国の様々な種類のコインがありますが、投資目的で見て、値上がりが見込めるコインとなると的が絞りやすく、物を選ぶのにさほど苦労はしません。保管しやすさ、持ち運びという点でもコインのほうが優れています。

「コイン投資 VS 金投資」

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有事の金という言葉があるように、金は長い間、安全な資産として人々からの信頼を集めてきました。一口に金投資と言っても、ベーシックな金地金の保有から、月々小口で買い続けていく積み立て方式、投資信託、地金型金貨など、様々な方法があります。

まず、金EFTや投資信託は、基本的に株と同じように証券化された金の取り引きのみで、そのほとんどが現物資産である金との交換ができません。つまり、金そのものを買っているのではなく、権利だけを買っていることになります。簡単に取り引きできるのは魅力ですが、急騰や下落など値動きが複雑化しており投資判断が難しい状況です。

また、金先物取引では、なんと約70倍ものレバレッジをかけることができてしまいます。FXのレバレッジが最大25倍、その約3倍ものレバレッジです。もはやマネーゲームの感が否めません。
そして金の売買は、200万円以上になると氏名などの申告が必要となっています。高額の金をこっそり売却するのは違反です。

<金投資のメリット>

  1. 多彩な投資方法がある
    金地金や金積立、投資信託、地金型金貨、先物取引と、様々な投資方法があります。自分の目的や資金にあった投資を選べます。しかし、中にはリスキーな投資法もあるので注意が必要です。

  2. 小口からでも購入可能
    金地金はその日の金価格により値段が決まります。例えばその日の金価格1グラムが5000円だとしたら、1kgが500万円となります。小さな5グラムくらいの金ならば25000円で買える計算です。このほかにも毎月決まった金額の分だけ金を買っていく積立て方式や小口の投資信託などもあり、少額からでも投資に取り組めます。

  3. 現物なら金そのものに価値がある
    これは金地金や地金型金貨に限りますが、金そのものの価値は失われることがありません。株なら会社が倒産してしまえば株はただの紙切れになりますが、金はそのままで価値があるため安全資産と言われています。

<金投資のデメリット>

  1. 相場を読むのが難しい
    金価格も世界情勢に敏感に反応するために値動きを見極めるのが難しい投資。特に、テロや戦争といった突発的な出来事に反応しやすいためにプロでも見極めが難しいのです。

  2. 金地金の保管や積立てで、コストがかかることも
    金地金の場合は、保管の心配があります。自宅で保管する場合は、盗難リスクに備える必要があり、金庫を用意するか、貸金庫などを借りる場合も手数料がかかります。また、金積立の場合は、手数料がやや割高に設定されていますし、保有している間、継続的に手数料がかかってきます。金EFTや投資信託では、手数料は安めに設定されていますが、金と交換できないケースがほとんどです。

  3. 持ち出しリスク
    金は様々な金属の中でも重い金属。ですから、災害などで持ち出すとなった時に重さがネックとなります。100キログラムもの金の延べ棒を保有されているという人の話を聞いたことがありますが、万が一の際、100キロを持ち出すことはまずムリです。その点、アンティークコインなら同じ価格の物でも1枚わずか数十グラムですから、持ち出すのは簡単、ポケットに入れるだけで大丈夫です。

<コイン投資との比較では?>
金投資とアンティークコイン投資は、同じ金でも全く異なる投資です。地金型コインの価格は、金価格を元に算出されるものですが、一方アンティークコインには、希少性と人気というプレミアが付くので、地金にはないような価格の高騰が見込めます。
 金地金の保管コストや持ち出しリスクと比較しても、小さくてスラブに封入されているアンティークコインのほうが優れていると言えそうです。

新型コロナウィルス騒動のように全世界が不況に陥った場合は、どれほど敏腕なファンドマネージャーといえども、利益を出し続けるのは難しいでしょう。現に、この度のコロナの影響で、保有していた投信が元本割れを起こし、泣く泣く売却せざる得なかったという投資家も多いようです。
このように、赤字になったときにじわじわと手数料が手痛く効いてきます。

その点、コイン投資なら、自分の手元に資産となるコインがあるため、万が一、世界恐慌などが起ったとしても、価値がゼロになることはありません。しかも、ただコインを保有しているだけなら手数料は一切かかりません。
こうした点からもコインは、不況下でも強いと言えるのです。

【コインコンシェルジュのつぶやき】
金地金を売ろうと思っている方、必読です。
これは、金関連の仕事をしている人から聞いた話ですが、金地金の売買で思いがけない苦労があるといいます。
それは......税金。株や実物資産は、買った時と売った時の差額が所得として、課税対象となります。金地金の売却をした場合も同じです。ところが、長らく持ち続けた金地金をいざ売却しようとなったときに、買った時の金額の伝票が手元に残っていない場合は大変です。
仮に1㎏の金地金を500万円で売却したとします。すると、購入時の金額を記した伝票がない場合、税務署から、この金地金は売却金額500万円の5%の金額で購入したものとみなされてしまうのです。つまり購入金額わずか25万円とみなされるのです!とうていありえない金額ですが、結果として売却益475万円もの高額が課税対象に。購入時の伝票が残っていなければ立証できませんから、税務署の決まり通りに税金を払わなければなりません。領収書は大切ですね。