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【特別コラム】イングランドの首都ロンドンは無限に広がるアンティークのユートピア【第1部】

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ご挨拶

皆様こんにちは。コインパレスの室田です。

今回は英国の首都ロンドンを代表するアンティーク・マーケットとフェアへと皆様をお連れいたします。

ロンドンでのアンティークの購入と言いますと、まず最初に頭に浮かんでくるのはサザビーズを筆頭とする世界三大オークションハウスなどが取り扱う芸術性の高いアンティークかもしれませんが、 今回は英国の全ての階級の人々の生活の糧である実用的なアンティーク入手の場であり、生活の源でもある骨董市にスポットを当てます。

どうか悠久の歴史を誇る英国ならではの奥深いアンティークの世界をじっくりとご堪能下さい。

プロローグ:生きて再び英国に降り立つ感動を胸に

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引用:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fb/Portobello_Road_antique_market.jpg

ゴールデンウィーク真っ只中の5月の日本を抜け出し、脇目も振らずに駆け付けた場所は地球の裏側、イギリスの首都ロンドンでした。 約12時間のフライトを終えてイギリスの表玄関ヒースロー空港に無事到着し、荷物を受け取ってターミナルを後にする時ほどにほっとする瞬間はありません。

そして久しぶりのイングランドの外気を胸いっぱいに吸い込み、これから始まる旅への期待と共に、再びイングランドの大地に降り立つ喜びを噛みしめるのでした。 5月初旬にもかかわらずロンドンの日中の気温は12度以下と大変低く、まだまだ肌寒く感じるほどですが、この澄み切った乾燥した空気こそは、 世界中からこの大都市に集まってくる旅人にインスピレーションを与え、熱しやすい魂を冷却して落ち着きを取り戻させ、知に対する欲求を鼓舞する原動力であるに違いありません。

今回の旅の最大の目的はロンドン市内に点在する世界的なアンティーク・マーケットを訪問し、歴史が育んだ正真正銘の英国アンティークとの運命的な出会いを果たすことですが、 捉えどころの無い歴史大国イギリスの多彩な魅力をこれまで以上に体感できればとの期待を胸に再び戻ってきました。

今回は僅か一週間と短い滞在ではありますが、ロンドンっ子の生活を疑似体験し、歴史に裏付けられたアンティーク売買の舞台として存続してきたマーケット空間に身を置き、永遠の老大国イギリスを多面的に俯瞰することに旅の意義を覚えます。

16世紀の英国を代表する知性であり史上最高の劇作家であるウィリアム・シェークスピアはかつて「全世界は舞台であり、そこに登場する全ての男も女も単なる俳優に過ぎない」と作中にて語っていましたが、 この名言を心に刻み、一演者として眼前に無限に広がるロンドンという名の永遠の名舞台に今、未知のアンティークを求めて踏み出そうとしています。

カムデン・パッセージ・マーケット:若者に人気の住宅街にひっそりと佇む小規模な英国アンティーク発掘の穴場

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引用:https://www.camdenpassageislington.co.uk/the-markets/315-pierrepont-arcade-market.html

イギリス滞在第2日目の今日は水曜日ですので、ロンドン中心部から北東に少し外れたイズリントン地区に所在するカムデン・パッセージ・マーケットに繰り出すことを事前に計画していました。

イズリントンはロンドン中心部の企業に勤める比較的富裕な若者に人気の新興住宅街で、街の裏手には運河が広がり絵画的な景観を形成しています。このほとんど観光化されていない眠っているように静かな街をロンドン中に知らしめているのは、 小規模ながらも瀟洒なアンティーク・マーケットの存在です。

ここを訪れる日の朝に限って早起きは無用です。と言いますのも、ここのディーラーたちは比較的ゆっくりと店開きを始め、9時を過ぎた頃になってようやくマーケットらしい顔を見せ始めるからです。 カムデン・パッセージというのは通りの名前で、目抜き通りを中心に小さなアンティークのストール(屋台)が立ち並んでいます。

パッセージの途中には幾つかのストールの集合体である屋根付きのカバード・マーケットが存在しますが、これらの薄暗い屋根付きの場所は知る人ぞ知る掘り出し物の穴場であり、 取引価格もロンドン市内の他のマーケットと比較すると大幅に低く設定されています。

シルバーや陶磁器、またガラス工芸品などの手に入りやすい小物が揃っているのもカムデン・パッセージならではの魅力です。 午前中にぶらりと訪れて探索し、名品とは呼べないながらも上質の家庭雑器や英国紅茶関連のアンティークを入手した後は、 周囲の住宅街に点在するおしゃれなカフェやレストランでゆったりと過ごすことがこのスタイリッシュな街の住人の流儀なのかもしれません。

ディーラーも商売気の無い人たちばかリで終始和やかな雰囲気が漂っており、商品も大体数ポンドから30ポンド(約4,500円)位で入手できる手頃なものが大半です。21世紀も22年を過ぎたイングランドですが、 古き良き英国の庶民生活を感じさせる小規模ながらも愛すべきこのマーケットだけは永久にこの世に残ってほしいと心から願わずにはいられません。

オールド・スピタルフィールズ・マーケット:一日中滞在しても飽きの来ないロンドン東部に所在する屋内常設アンティーク・マーケット

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引用:https://www.cktravels.com/old-spitalfields-market-east-london/

滞在3日目木曜日の今日は、これまでに一度も行ったことのないオールド・スピタルフィールズ・マーケットを訪問します。

ほぼ毎日開催されている同マーケットですが、アンティーク・マーケットとしての開催は木曜日のみで、 今回の旅のハイライトとして特に楽しみにしていました。地下鉄リバプール・ストリート駅から歩いて5分程度の場所にあるこの常設マーケットは、 イングランドの第2級指定建造物の中にあり、その歴史はチャールズ1世の治世下であった350年ほど前に遡ります。

屋根付きの場内にはカフェやファーストフードのレストランが目白押しで一日中寛げる場所で退屈せず、雨の日の木曜日のためのとっておきのアンティーク・スポットとしては折り紙付きです。

高い天井からは微かな自然光が差し込み、屋内とは言え何とも例えようのない居心地の良さを感じさせる場所です。規模の大きなストールやブースにはシルバーなどの定番のアンティークから、 キッチン道具、そして小型の家具まで普段の生活で重宝しそうな実用的アンティークが所狭しと並んでいます。

種類も豊富ですが、価格はロンドン市内一の安さを売りにしています。この理想的なマーケットにて本日デビューを飾った私を待ち受けていたのは、推定1780年代から1800年代頃、 つまりジョージ3世時代に制作された一脚のラマー(大ぶりの古風なワイングラス)で、60ポンド(約9,000円)で入手することが出来ました。

ここから至近距離の場所にはもう一つの有名なマーケットであるペティコートレーン・マーケットが存在しますが、こちらは古着や食料品を専門に取り扱う庶民的なマーケットとして全国的に知られています。 この界隈にはこれらのマーケット以外に特に見どころが多い訳ではないので、やはりアンティークファンにとっては木曜日の訪問が正解のようです。

バーモンジー・マーケット:かつての汚名を返上して灰の中から蘇ったロンドン南部の愛すべき野外アンティーク・マーケット

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引用:https://www.londonbb.com/bermondsey-antiques-market/

ロンドン随一の人気観光スポットであるタワーブリッジは「夢の懸け橋」と呼ばれ、19世紀末に創建された英国の象徴として、また歴史的建造物として世界的に知られています。 その南側にはバーモンジーと呼ばれている地域が広がっていますが、その中核を形成しているのがこの古いアンティーク・マーケットです。

一見アンティークとは何の関連性も見いだせないロンドン南部の下町に位置するこのマーケットですが、その起源はヴィクトリア期に遡ります。 当時、貴族の邸宅で勤務していた使用人たちが邸から持ち出した盗品を売り捌く場所として急成長したと伝えられているいわくつきのアンティーク・マーケットです。

盗品の取引は素性を明かすことのできない売り手の顔が識別され難い暗い早朝に松明の明かりの下で行われていたため、長らくトーチ(松明・懐中電灯の意)マーケットの愛称で知られていました。 現在は居住地域に囲まれた空き地の様な殺風景な場所に数十点のストールが設置され、地味ながらもほのぼのとした庶民の生活空間の趣が感じられるロンドン屈指のアンティークの名所へと成長を遂げました。

中規模の野外マーケットとしての性質上、中型のアンティークや家具も多く見られます。 また世界各国のディーラーたちにとってはアンティークとビンテージ物の腕時計や懐中時計、また年代物の宝飾品の重要な仕入れ先としても評価を確立している場所です。

最寄り駅は地下鉄ロンドン・ブリッジ駅ですが、駅からは少し離れたわかりにくい場所に位置し、 かつては治安の悪さも取り沙汰されていた悪名高きバーモンジー地区ですが、2010年代以降のテムズ川の南側の再開発の潮流に乗って著しい変貌を遂げ、汚名を返上しつつあります。

何時間いても居心地のいいファッショナブルなカフェやレストラン、また倉庫を改造してオープンした開放感のあるショッピングセンターなどが集まる新しいバーモンジーは今、 ロンドンで最も活況を呈する一大観光スポットへと生まれ変わりました。その中心的存在である昔ながらのバーモンジー・マーケットは、 今や世界中からここを訪れるアンティーク・コレクターとディーラーにとっての英国アンティークのメッカとして、現在のロンドンにおけるアンティーク受容文化を牽引しています。

2022_0127_muro_6.jpg引用:http://darrinbrooks.blogspot.com/2006/07/bermondsey-square-antiques-market.html

ロンドン市内で金曜日に開催される唯一のアンティーク・マーケットであるバーモンジー・マーケットは、最高レベルの英国アンティークが破格の値段で手に入る市内唯一の場所かも知れません。

それ故に質の高いアンティークはすぐに売れてしまいます。到着直後に入り口付近のストールで最初に発見した1829年、 ジョージ4世時代のマザー・オブ・パール(白蝶貝)の取っ手付きの純銀デザート・フォーク6本セットの束のことを急に思い出し、該当するストールに戻ってみますと、 その輝かしいセットの有った場所のみがぽっかりと穴が開いたように空白になっていたため、唖然としました。

まだどこかに保管されている可能性が無きにしもあらずとの思いからおずおずとディーラーに尋ねてみると、5分ほど前にアメリカ人の女性が80ポンド(約12,000円)で即座に購入したとのことでした。 またその商品はディーラーが貴族の邸宅でのハウスセール(一族の所有物のうち邸宅以外の全ての物に値を付けて即売する破格の大規模セール)で買い付けてきた大変由緒あるものであったとのことでした。

2022_0127_muro_7.jpg引用:https://ja.foursquare.com/v/bermondsey-antiques-market/4c5bbb49857ca593d447c8cb?openPhotoId=53b69154498ec25a4d785aa1

同じようなものがまた手に入ることもあるのかどうかをディーラーに尋ねてみますと「あそこ迄レベルの高いものは恐らくもう出て来ないでしょう。アンティークとの出会いは運命のようなものですよ。 あなたは自分の美しいものを見抜く目をもっと信頼したほうが良さそうですね」と、何とも経験豊富なディーラーならではの含蓄を感じさせる返事が返ってきました。

愕然と立ち尽くす私の姿を見て気の毒に思ったのか、そのディーラーは終始丁重に接してくれたため、私の行き場の無い絶望感もやっとのことで収まり、結局一つの収穫を得ることもなく、 正午を少し回ったバーモンジーを立ち去る決心を固めました。

ポートベロー・マーケット:イングランド随一の英国アンティークの山と世界各国から集まる観光客でてんやわんやの土曜日限定のアンティークの祝祭

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早くも週末土曜日を迎える今回の旅ですが、私のトレジャー・ハンティング(宝探し)は春たけなわのイングランドの首都ロンドンにて本日クライマックスを迎えることでしょう。

前日のバーモンジー・マーケットでの失敗は繰り返すまいと胸に誓い、午前6時に起床して準備万端で臨む場所は、ロンドンのみならず世界最大のアンティーク・マーケットとして名高いポートベロー・マーケットです。

アンティークのマーケットとしては他を凌駕する長い歴史を誇り、世界的知名度を誇る同マーケットですが、 最寄り地下鉄駅ノッティング・ヒル・ゲート駅から出てくる大勢の観光客と同じ方向に向かい、北に延びるポートベロー・ロードに入っていきますと、 まずアンティーク・マーケットがあり、その後には生鮮食品やファーストフードを取り扱うストールが続き、さらにその先には古着やセカンドハンドのストールが点在しています。

マーケットの中心的存在であるアンティークのストールは常設のものを含めますと数千に上り、歴史に根差した上質なアンティークの発掘場所として全世界のコレクターやディーラーの購買意欲を惹きつけています。

起床後、朝食を取る時間も惜しんで最寄りの地下鉄駅に直行し、一目散にノッティング・ヒルへ駆けつけた甲斐あってか、 7時50分頃にはマーケットに到着することができました。辺りのストールを見てみますと、ちょうど品出しを終えたばかりのディーラーたちが梱包用の新聞紙やビニール袋を片付けているところといった感じで、 マーケット全体が土曜の朝のイングランドの清々しい静寂感で満たされていました。

そして何気なく手頃な値段でシルバー雑貨が手に入る人気のストールに近づいてみますと既に先客ありの様子でした。 ストールのすぐ下にある3つの段ボール箱の前でしゃがみ込んだ一人の女性が箱の中の激安商品をがさがさと音を立てて漁っている後姿が目に入りました。

その横に並んで私もいろいろ手に取って3ポンド均一商品の箱の中を物色しますが、良さそうなものはなかなか見当たりません。 どうやら隣の女性が趣味のいい値打ちのあるものを私の到着以前に全て素早く探し出したようで、その横顔は選択した品々を購入する強い意志を覗かせています。

次の瞬間に女性はあっさりと手にしていた全ての商品の支払いを済ませた後、私が我に返るころには雑踏に紛れてとっくに姿を消していました。 それでも諦めの付かない私は、十分に年季の入ったビンテージ品と呼べるハンドル付きの装飾的なシルバー・ソースボート2点を急いて購入し、 次なる目当てのストールを目指すために、若干の未練を残しながらもシルバーのストールに別れを告げ、雑踏の中に身をうずめる意を決します。

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歩調を早めて前進する間に元来た道を何気なく振り返ってみますと、今やポートベロー・ロード全体が物見遊山の観光客で溢れ返り、 自分の存在がかき消されるほどの凄まじい喧噪に包まれていました。その後数カ所の事前チェック済みのストールを除いてみましたが、 特に目当ての物が見つからなかったため少し予定を変更して、マーケットの端にある18世紀から19世紀にかけてのジョージアンと ヴィクトリアンのワイングラスの専門家であるデイヴィッド・グリックが経営するスティル・トゥー・フュー(今ではほとんど見かけないの意)という風変わりな名前のアンティーク・グラスの専門店を数年振りに再訪することにしました。

いつ訪れても掘り出し物発見率の高いこの例外的な店の経営は、店主のデイヴィッドの目利きによるコレクションの水準の高さと審美眼の成せる業です。重いドアを押して中に入ると誰もいないのか静まり返っています。 しばらくして奥のオフィスからオーナーのデイヴィッドが出てきていかにも英国人らしい丁重過ぎるほどの挨拶によって迎えてくれました。

デイヴィッドの言葉が終わるや否やガラスケースの方に目をやります。その後、店内の商品を一点ずつ注意深く見て回り、気になる商品の説明をデイヴィッドに求めます。そのようなやりとりをしているうちに、ある一つのものに意識が集中し始めます。

それは直系10センチはある大きなウィスキー用のロックグラスで、18世紀のアイルランドで制作された一点ものであること、またガラスの中には無数の気泡と制作時に混入したと思しき黒い点のようなものが無数に見られる点を特徴とすることをデイヴィッドは丁寧に説明してくれました。

恐る恐る値段を聞いてみますと145ポンド(約21,750円)とのことでした。デイヴィッドの誠実そうな顔と正真正銘の300年物のアンティークを交互に見比べているうちに、自分の中で好奇心が確信へと移行しているのを感じ、即購入することにしました。

よく考えてみますと、ここまで古い真の英国アンティークをこのような破格の値段で入手することは日本では到底考えられないスリリングな体験であり、英国の懐の深さを改めて実感する貴重な機会となりました。

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昨日の損失を取り戻したような満足感からふと我に返り時計を見ますと、既に午後12時を回っていました。そして朝から何も食べていなかったことに気付き、突然死人の様な空腹感に襲われます。 若干落ち着きを取り戻して過去の記憶を辿って行くと、マーケットのどこかの屋内の地下に一日中イングリッシュ・ブレックファーストを提供するレストランがあったことを思い出しました。

その古いアーケードの様なマーケットの階下に降りてみますとやはり同じ場所で同じ店が今も営業していることが認められ、全身を満たす安堵感と共に疲れた腰を下ろすことにしました。 イングリッシュ・ブレックファーストとは英国式の朝食セットの事で、目玉焼きやソーセージ、また変わり種としてマッシュルームの炒め物やポテト料理をワンプレート盛りにした食べ応えのある料理です。

食事の低級さでこれまで旅行者を落胆させてきた悪名高き英国ですが、そんな英国ならではの最も英国らしい料理として自信を持って取り挙げられる機会が多いのがこのイングリッシュ・ブレックファーストと、 古くは上流階級の習慣として広まったアフターヌーン・ティーです。フライパンで調理される炒め物中心のメニューであることからフライアップ(焼き物の意)の別名を持つイングリッシュ・ブレックファーストですが、西洋式の朝食の基本として世界中のホテルで瞬く間に広まりました。

温かい料理で胃を満たし、ペーパーカップ仕様のアール・グレイ紅茶はそのままテイク・アウェイ(テイクアウトはアメリカ英語)することにして、 急ぎ足でマーケットに戻ることにします。今朝から特に気になっていた別のストールに戻りますと、 華麗なるフローラルスクロールが特徴的なヴィクトリア時代に制作された美しいティー・ナイフと呼ばれるアフタヌーンティーで供されるデザートのためのナイフがまだ数本残っていました。

2022_0127_muro_11.jpg引用:https://www.uktourcenter.com/portobello-market-london/

値段は一本20ポンド(約3,000円)とのことでしたが,なかなか値下げ交渉に応じようとしない頑固なディーラーを何とか説得し、2本購入するという条件でペアで30ポンド(約4,500円)にしてもらい商談が成立します。 早朝は通りを行き交う人もまばらで、急ぎ足で北上してきたポートベロー・ロードでしたが、昼食を挟んで全ての買い物を終えて午後になってから駅の方向に急いで引き返すのは至難の業です。

購入したものを大切に両手で抱えながらひたすら人込みを遠ざけ、来た道を淡々と引き返すしかありません。 毎回来るたびに名残惜しい感じのするポートベローではありますが、今日もまた少し後ろ髪を引かれる思いで骨董市特有の午後のさんざめきを後にするのでした。

(第二部に続きます。)